研究概要 |
1.イミダゾリニウムカチオンを金属錯体触媒存在下に水素で還元する反応を開発した。1,3-ジフェニルイミダゾリニウムと等モルのトリエチルアミンとの混合物は、溶液中で1気圧の水素雰囲気下において1,3-ジフェニルイミダゾリジンとトリエチルアンモニウムに変換された。この反応は水素分子をヒドリドとプロトンに分割して各基質分子に付加させているため、水素を不均一活性化する錯体触媒が有効であった。高い活性を示すロジウムおよびイリジウム錯体を見出し、これらが常温で反応を定量的に進行させることを明らかにした。このうちイリジウム錯体の方は、逆反応にあたる1,3-ジフェニルイミダゾリジンからの水素発生にも高い触媒活性を示し、等モルのN,N-ジメチルアニリニウムをプロトン源として添加した条件で水素と1,3-ジフェニルイミダゾリニウムを定量的に生成した。本反応の可逆性を反映して、プロトン源の酸性度を下げると反応の進行度合いは低下した。また、塩基存在下における水素貯蔵とプロトン添加による水素放出が、常温で連続的に実施可能であることが実証された。基質のフェニル基への置換基の導入効果や、反応中間体の検出も検討している。 2.生物的メタン生成経路による炭素原子の還元では、メチン炭素が補酵素H4MPTと結合してイミダゾリニウム環を形成したのち、イミダゾリジンのメチレンへと還元される過程を経由する。これに倣って、H4MPTの活性サイト近傍と構造が類似した分子2-(アニリノメチル)ピペリジンを用い、ギ酸等価体と反応させてイミダゾリニウム環へと変換した。これを1気圧の水素下で、触媒量のロジウム錯体およびトリエチルアミンとともに処理したところ、開環を伴いながら2-位炭素の還元がメチルの段階まで進行した。この反応は、4段階の水素化を要する二酸化炭素からメタンへの変換過程における中間2段階に相当するものであり、温和な条件で行うことができた。
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