研究課題
基盤研究(C)
Julia-Kocienski反応はテトラゾリルスルホンとアルデヒドからトランス‐アルケンを与える反応で最近生理活性物質の合成によく用いられているが低収率あるいは低選択性となる場合も多い。そこで一般性のたかい合成法の開発を目指してテトラゾイルスルホンの1位のフェニル基を小さな電子供与基メチルに置き換えた試薬の開発を行った。得られた試薬の反応では収率の向上が見られたが、選択性についてはほぼ同様で、改善の余地があった。そこで1位の置換基をさらに小さくしたらどうなるかに興味を持ち、1位に置換基を持たないテトラゾイルスルホンを合成し種々のオレフィン化反応を検討した。スチルベン誘導体の合成で98:2~>99:1の極めて高いトランス選択性、87-100%の高収率でアルケンを合成することに成功した。さらに興味深いことに脂肪族アルデヒドとの反応ではDME溶媒中では選択性を示さないがDMF中では非常に高いシス選択性を示すことが分かった。現在、この反応の一般性についてさらに検討を行っている。また、テトラゾイルスルホン以外にもベンゾイミダゾイルスルホンを新規オレフィン化試薬として開発し、極めて高い収率でアルデヒドやケトンをメチレン化できることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
オレフィン化試薬として現在利用されているテトラゾイルスルホンでは1位にフェニル基またはt-Bu基を持つものが知られている。これらは嵩高い置換基であり、小さな置換基での収率や選択性に興味を持ち、1位に小さなメチル基を持つ試薬を合成しそのオレフィン化反応を調べた。フェニル基と比べ収率の向上が見られたが選択性はあまり変わらなかった。そこでさらに小さな置換基を持つ試薬として、1位に置換基を持たない、2位置換体を合成したところ、スチルベン誘導体の合成では従来の試薬から得られる80:20のトランス選択性を大きく改善する結果が得られた。さらにベンゾイミダゾイルスルホンを新規メチレン化剤として開発することに成功した。
現在までに新しく合成したオレフィン化試薬、1-Meおよび2-Phテトラゾイルスルホンについて種々のオレフィン化反応を検討し、その有用性を示す。新規オレフィン化試薬として開発したベンゾイミダゾイルスルホンについてはメチレン化反応で顕著な成果が得られているが、アリル化試薬としても高いシス選択性を示すことが分かった。この反応についても反応条件を検討することにより合成法としての確立を目指す。さらに、得られる知見を基にアリールスルホンを用いるオレフィン化反応の反応機構の解明を目指したい。
新規オレフィン化試薬の合成に予想以上に手間取ったために、オレフィン化反応の検討は予定より遅れ、その費用は使用しなかった。また、反応機構の解明も予定していたが、これについても行えなかったので平成26年度に行いたい。平成26年度は種々のアルデヒドやケトンを用いるオレフィン化反応の検討を行う。そのために、多くのアルデヒドやケトン、エステルなど反応基質を購入する必要があり、さらに塩基や溶媒などの検討も必要でその費用が必要となる。さらに理論計算を用いる反応の解析及び、反応の低温NMRでの解析も予定しており、その費用に使いたい。
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