研究実績の概要 |
Julia-Kocienski反応はテトラゾリルスルホンとアルデヒドから一般に高いトランス選択性でオレフィンを与える反応であり多くの合成化学者に利用されている。しかし、その立体選択性と収率はアルデヒド及びスルホン置換基により大きく異なり、立体がどのように制御されるのかの解明が待たれる。本研究では新しいJulia型オレフィン化試薬の開発と立体選択性まで含めた反応機構の解明を目指した。新しい試薬合成の方針はテトラゾイル基の置換基である嵩高いPh基を小さな置換基に置き換えることと、テトラゾイル環の窒素の数を減らしたらどうなるかを調べることであった。この方針に基づいて10種類の試薬を合成し種々のアルデヒドとの反応を行った。選択性が高い反応は低収率となり有用な反応が見いだせなかったため、収率と反応効率のみに焦点を当てたメチレン化反応の研究を行い、高効率メチレン化剤の開発に成功した。結果は論文で報告し(Org. Lett. 2015, 17, 2554)、第3回プロセス化学国際シンポジウム(2015年7月、京都)で発表した所、優秀賞を受賞した。本研究で開発した反応剤は今年4月より東京化成工業にて販売されるに至った。さらに、このメチレン化剤の開発で得られた知見を基に、高選択性だが低収率であった反応の反応条件を見直したところ、シス-1,3-ジエンが高い選択性、高収率で得られることを見出し、現在まとめを行っている。
|