研究課題
本研究の最終目標は安価で、取扱いとスケールアップが容易な糖鎖の自動合成装置の開発である。本研究の申請時点の2012年段階で、糖鎖の自動合成装置はいくつかのグループによって開発されていたが、普及には至っていなかった。この間、一部の装置が市販化に至ったが、これまでの装置は固相合成を自動化したに過ぎない。一方、申請者らは電気化学的に糖供与体を活性化してグリコシド結合を形成するいわゆる電解グリコシル化反応に着目し、オリゴ糖の液相自動合成に応用するための装置開発に取り組み以下の実績をあげた。1.液相電解自動合成装置の開発:電解グリコシル化反応において最も重要な反応条件のパラメータは温度である。研究に着手した時点で、-80 ℃から-50 ℃付近の極低温条件を厳密に制御出来る温度可変の低温反応装置は存在していなかった。まず、代表者らは市販の低温装置を改造し、シリンジポンプ、直流安定電源とをシーケンサーで制御するタイプの初号機を完成させた。その後、シーケンサーをパソコンに置き換え、パソコン上で制御ソフトを用いて液相電解自動合成装置全体を制御するタイプへと改良した1号機を完成させた。2.オリゴグルコサミン合成:装置を用いた合成に先立って、六糖までのオリゴグルコサミンを各段階で単離精製操作をしながら合成した。その知見を元に液相電解自動合成装置を用いて三糖から六糖までのオリゴグルコサミンを合成した。四糖までのオリゴ糖ではグリコシル化反応の平均収率80%以上を達成し、マニュアル合成を上回る結果を得た。3.TMG-キトトリオマイシン前駆体四糖の合成:生物活性オリゴ糖の自動合成を目的にTMG-キトトリオマイシンを合成標的として前駆体となる四糖の合成を1号機を用いて実施した。グリコシド結合の立体化学について一部完全に制御出来ていないが、単糖から四糖前駆体を28%の収率で自動合成することが出来た。
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