研究課題/領域番号 |
25410117
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
菅 誠治 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (50291430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イミニウムカチオン / アルカロイド / カチオンプール法 / 電解酸化 / 立体選択的反応 / NMR |
研究実績の概要 |
実践的な有機合成に汎用される炭素カチオン種の立体構造と反応性や立体選択性の関係を、分光学的手法を用いて解析、理解しようとした例はこれまでほとんどない。本研究では、環状アルカロイドの合成において重要な中間体である環状N-アシルイミニウムイオンを例にとり、カチオンの立体配座とその反応における立体選択性の相関関係を詳細に検討することにより、立体選択的有機カチオン反応の開発と深化およびこれを用いた環状アルカロイドの立体選択的合成のための実践的な指針の獲得を目的として研究を推進した。 本年度は、昨年度までに引き続き、申請者らが独自に開発したインダイレクトカチオンプール法を用いてピぺリジン由来環状N-アシルイミニウムイオンの4位、5位、6位にフェニル基やメチル基を有するカチオンを発生させ、これに対して求核剤としてアリルスタンナン、TMSCNなどの非キレーション型求核剤およびグリニャール反応剤などのキレーション型求核剤を作用させた。多くの場合、高い立体選択的で生成物が得られたが、アリルグリニャール反応剤を用いたときに、いずれの場合もアリルスタンナンを用いた反応とは立体化学が全く逆転するという極めて興味深い現象がおこった。さらに、NMR分光により発生させたN-アシルイミニウムイオンを直接観察し、その立体配座について情報を得た。現在、これらのデータを精査するともに、計算化学を含めた考察を行い、炭素カチオン種の立体構造とこれに対する求核反応の立体選択性の関係を系統的に調査し、この反応における立体選択性発現の機構の解明を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、研究目的である環状N-アシルイミニウムイオンの立体配座とその反応における立体選択性の相関関係について様々な知見が得られた。とくに、4位、5位、6位に置換基をもつピぺリジン由来環状N-アシルイミニウムイオン中間体の立体配座を分光法で確認できたことは画期的である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、4位、5位、6位に置換基をもつピぺリジン由来環状N-アシルイミニウムイオンを用いた反応については、その反応挙動とカチオンの立体化学に対する多くの知見が得られた。本年度は、①置換基の違いがカチオンの立体化学にどう影響するのか?、②求核剤との反応における立体化学とどう関連しているのか?、について系統的に検討を行い、本反応系の立体選択性発現機構と環状アルカロイドの立体選択的合成のための実践的な指針の獲得をめざして研究を推進する。また、求核剤の違いにより発現する立体選択性の逆転現象についても、求核剤の種類を増やしていくことで、発現機構とその一般性について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画は順調に進んでいるが、次年度にNMR測定の頻度が高まることが予想され、重溶媒やNMR測定管等の高額の試薬やガラス器具の使用が見込まれるため。
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次年度使用額の使用計画 |
通常の反応、合成実験に必要な薬品やガラス器具等の消耗品とNMR測定のための重溶媒やNMR測定管等の購入に使用する。
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