研究課題
渦鞭毛藻類が生産するポリ環状エーテルの一つであるシガトキシンは、食物連鎖によって大規模な食中毒を引き起こす。一方、タムラミドAは、他のポリ環状エーテルの活性を阻害するものの全く毒性を示さないことから、これらの化合物の活性発現機構について興味が持たれている。また、海綿から単離されたマクロライドであるダクチロライドやエニグマゾールは、様々なヒトガン細胞に対して増殖阻害活性を示すことから新規な医薬品リード化合物として興味が持たれている。これらの化合物は天然からの入手が極めて困難であり、十分な研究が行われていない。そこで本研究では、分子内アリル化反応によるエーテル環形成を伴う収束的な分子構築法を基盤とし、これら希少天然物の量的供給の確立を目指して検討を行った。本年度はまず、シガトキシンCTX3CのH-M環部について大量供給可能な合成ルートの確立を目指した。このセグメントの合成においては、鍵段階の基質となるアリルスズ部分の導入が低収率であり、全合成に必要な量的供給の大きな障害となっていた。種々検討した結果、新たにエステル化を経由する合成法を開発することでこの問題を解決し、H-M環部の効率的合成ルートを確立することができた。次にダクチロライドの合成について検討を進めた。この化合物はエキソメチレンTHP環を有するマクロライドであり、多数の二重結合を有する点も特徴的である。本研究では、合成前駆体であるアルコール部分とカルボン酸部分をそれぞれ立体選択的に合成した後、分子内アリル化を用いたTHP環構築を伴う手法によってこれらのセグメントを連結した。最後にマクロラクトン化と官能基変換を行うことでダクチロライドの収束的全合成を達成することができた。エニグマゾールに関しては、アルコールセグメントおよびオキサゾール部分をそれぞれ立体選択的に合成することに成功した。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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