研究課題/領域番号 |
25410119
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
武内 亮 青山学院大学, 理工学部, 教授 (00216871)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イリジウム / 原子効率 / 環境調和型反応 / 付加反応 / 付加環化反応 / アルキン / アルケン |
研究概要 |
本研究課題では、イリジウム錯体の新規な触媒機能の開発により、効率的有機合成反応を実現することを目的とし、本年度は、単純アルケンの1,3-ジケトンによるヒドロアルキル化反応と[2+2+2]付加環化反応による2-アミノピリジン及び2-アシルピリジンの効率的合成を中心に検討を進めた。 1.活性メチレン化合物による脂肪族単純アルケンへの触媒的分子間ヒドロアルキル化反応は、固体酸を用いた反応が一例報告されているのみであった。反応温度は高温であり、収率及び選択性にも改善すべき点があった。[Ir(cod)2]SbF6触媒により、アセチルアセトンと脂肪族単純末端アルケンの反応が、1,2-ジクロロエタン環流下で進行し、Markovnikov型生成物が高収率で得られることを見出した。カチオン性イリジウム錯体の対アニオン、添加する配位子、アルケンと1,3-ジケトンのモル比、反応温度、反応溶媒、反応時間などを詳細に検討し、収率に与えるそれぞれの影響を調べた。基質の適用範囲や官能基選択性について調べた。 2.2-アミノピリジンは、医薬品などに見られる重要な複素環骨格である。既存の合成法は2-ハロピリジンの求核置換反応が用いられており、原子効率的合成が求められている。本研究では、ジインとシアナミドとの付加環化反応を検討した。[Ir(cod)Cl]2触媒により、高収率で2-アミノピリジンが得られることを見出した。 3.ピリジンは電子欠乏性芳香環であるので、Friedel-Crafts反応が進行しない。そのため、アシルピリジンの合成には多段階の工程を要していた。本研究では、原子効率的合成として、ジインとアシルシアニドとの付加環化反応を検討した。[Ir(cod)Cl]2触媒により、高収率で2-アシルピリジンが得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画については、計画通りに研究が進んでいる。脂肪族単純アルケンへの分子間ヒドロアルキル化反応では、反応条件の最適化を行い、基質適用範囲を明らかにした。シアナミド及びアシルシアニドの付加環化反応については、触媒スクリーニングを行い、有望な触媒系を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画を今後も継続して実施していく。脂肪族単純アルケンへの触媒的分子間ヒドロアルキル化反応では、アルケンと活性メチレン化合物の適用範囲の拡大を行い、反応機構に関する検討を行う。反応を支配する要因を明らかにして、さらなる反応の効率化を目指す。シアナミド及びアシルシアニドの付加環化反応では、反応条件の最適化を行い、基質の適用範囲の拡大を行う。また、非対称ジインを用いて位置選択的付加環化反応を行い、位置選択性を支配する要因を明らかにする。 これまで当研究室で行ってきたオリゴヘテロアレーンの効率的合成を発展させ、様々な拡張π‐電子共役系の効率的構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、従来研究室が所有していた試薬、ガラス器具、カラムクロマト用シリカゲルから使用し始め、さらに反応スクリーニングが、予想よりうまくいったため、予備実験の数が抑えられた。また、大学の共通機器である500MHz超伝導NMR装置の超伝導磁石の故障により、本研究の遂行に必須であるNMRの測定ができないという全く不測の事態が起こった。修理期間中の実験数は減少せざるを得なかった。その結果、物品費の使用が当初の予定より抑えられた。これにより生じた次年度使用額は、消耗品の購入に充てる予定である。 次年度の研究費は、ほとんど通常の有機合成化学研究の消耗品に使用する予定である。具体的には、試薬、有機溶媒、ガラス器具、カラムクロマト用シリカゲルなどである。
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