研究実績の概要 |
本研究課題では、イリジウム錯体の新規な触媒機能の開発により、効率的有機合成反応を実現することを目的とした。具体的には、単純アルケンのヒドロアルキル化反応と官能基が置換したニトリルとジインの[2+2+2]付加環化反応を中心に研究を行った。 平成25年度は、単純アルケンのアセチルアセトンによるヒドロアルキル化反応がカチオン性イリジウム錯体触媒により進行することを見出した。対アニオンの影響など反応条件を詳細に検討し、カチオン性イリジウム錯体触媒に特徴的であることを明らかにした。ジインとシアナミドの[2+2+2]付加環化反応が進行することを見出した。反応条件を詳細に検討した。さらに、アルキニルケトンとジインの[2+2+2]付加環化反応を検討し、適用範囲を明らかにした。 平成26年度は、単純アルケンのヒドロアルキル化反応において、基質の適用範囲を検討し、官能基許容性を明らかにした。ジインとシアナミドの付加環化反応において、基質の適用範囲を明らかにし、非対称ジインを用いて位置選択的付加を行った。DFT計算により、反応経路と電子状態の検討をおこなった。その結果、シアナミドのHOMOのエネルギー準位はニトリルに比べて高く、π電子の求核性が強いことがシアナミドの反応性を高めている要因であることを見いだした。ジインとアシルシアニドの付加環化反応における基質の適用範囲を明らかにした。 平成27年度は、単純アルケンのヒドロアルキル化反応において、1,3-ジケトン以外の活性メチレン化合物への適用範囲の拡大に取り組んだ。非対称ジインとアシルシアニドの付加環化反応において、位置選択的付加が進行することを見出した。ビアリール架橋ジインとアルキン及びニトリルとの付加環化反応を検討した。新規芳香族複素環架橋ジインの合成を行い、その付加環化反応を検討した。
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