研究課題/領域番号 |
25410120
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坂井 教郎 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (00328569)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インジウム / 還元 / ヒドロシラン / カルボン酸 / 単体硫黄 / チオエーテル / ガリウム |
研究実績の概要 |
臭化インジウムとテトラメチルジシロキサンから構成される還元触媒系を用い、脂肪族カルボン酸に求核剤としてクロロシランや塩化水素を添加し、加熱してみたが全く目的とする塩化アルキルを合成するには至らなかった。そこで塩素化剤を金属塩化物に変えて検討したところ、2価の塩化銅を用いると目的とする塩化アルキルに効率良く変換できることを新たに見出した。しかし、臭化インジウムの対アニオンである臭素由来の臭化アルキルが副生し、塩化アルキルとの分離精製が非常に困難となる問題点に直面した。そこで、インジウム化合物に変わる新たな触媒を探索した。その結果、同族元素である塩化ガリウムが臭化インジウムと同様の触媒効果を示し、カルボン酸を塩化アルキルに一段階で変換出来ることを新たに見出した。この塩化ガリウム還元触媒系は、他の官能基であるハロゲン、内部アルケン部位あるいはチオエーテル部位には全く影響を及ぼさずカルボン酸のカルボニル部位のみを化学選択的に還元し、塩素化することが判明した。さらに、この分子変換は強力な電子求引基がついた芳香族カルボン酸にもある程度適用できることが判明した。 昨年度、ヨウ化インジウムとテトラメチルジシロキサンを用いることで芳香族および脂肪族カルボン酸とチオールからチオエーテル誘導体が一段階で合成できる手法を報告した。しかし、この手法では、非常に悪臭を伴うチオールを使用しなければならない問題点に直面していた。そこで新たな硫黄源を探索したところ、安価で無臭の単体硫黄を利用することでチオエーテル誘導体が合成できることを新たに見出した。つまりヨウ化インジウム還元触媒系を用い、芳香族カルボン酸と脂肪族カルボン酸を単体硫黄で処理すると対称チオエーテルが効率良く一段階で合成できる手法を新たに開発した。この手法も比較的幅広い官能基許容性が見られることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルボン酸から塩化アルキルに直接変換できる還元触媒系として、新たに塩化ガリウムが同等の触媒効果を有することを発見出来た事が大きな鍵となった。 また、悪臭を放つチオールの代替硫黄源として、安価で無臭の単体硫黄をカルボン酸と組み合わせることでチオエーテル誘導体が効率良く合成できることを新たに見出したことも非常に価値がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果としてカルボン酸からヨウ化アルキル、臭化アルキルおよび塩化アルキルに直接変換できる手法は開発することができた。しかし、成果で得られた還元触媒系ではカルボン酸からフッ化アルキルあるいはトリフルオロメチル化には適用することができなかったので、これらのハロゲン化に適用できる新たな還元触媒の探索を行う。 また、カルボン酸と単体硫黄からチオエーテルへ分子変換する手法は明らかとなった。しかし、生成物の構造が対称チオエーテルである。そこで単体硫黄にカルボン酸を複数添加することで非対称チオエーテルが出来るような新たな合成プロセスの開発を目指す。さらに、カルボン酸以外のアルデヒドやアルコールなどの反応基質にも展開できるか検討する。
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