研究課題/領域番号 |
25410122
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大洞 康嗣 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50312418)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニオブ触媒 / 合成触媒 / 前周期金属触媒 / フィードストック / 効率的合成 |
研究概要 |
本研究ではグリーンケミストリーに資する効率的分子触媒反応開発を目的として、高活性低原子価ニオブの合成触媒として利用した新規触媒反応を創成することを目的とする。 平成25年度は、高い触媒活性ならびに安定性を有する均一系触媒としての新規低原子価ニオブ触媒の調製法の確立とともに高付加価値的分子変換反応の達成を試みた。 その結果、入手容易なペンタアルコキシニオブを出発原料とし、グリニヤール試薬あるいは亜鉛 / トリメチルシリルクロリドと反応させることにより効率的に低原子価ニオブが合成できることを見出した。 得られた低原子価アルコキシニオブ化合物を触媒として用い、テトラヒドロフラン溶液中で、アルキルイソシアナートを加えることで、イソシアヌル酸アルキルが高収率で得られることを見出した。本反応においては従来用いられているNbCl3(DME)などの他のニオブ種を触媒として用いた場合には反応がほとんど進行しなかったのに対し、効率よくイソシアナートの三量化反応が進行することが分かった。 また、五塩化ニオブに添加剤としてヒドロシラン化合物を用い、還元させることにより、高活性な新規低原子価ニオブ化合物が発生することもあわせて見出した。得られた新規低原子価ニオブを触媒に用い、tert-ブチルアセチレンと末端アルケンとを反応させることによって、1,4,5-置換-1,3-シクロヘキサジエンを高位置選択的に与えることを見出した。 本反応では副反応であるアルキンの環化三量化反応を完全に抑制することも可能となった。このように本研究で見出した新規低原子価ニオブ触媒は、従来用いられてきた前周期低原子価金属触媒ならびに、低原子価ニオブ触媒としてこれまで用いられてきた、NbCl3(DME)を用いたときと比べ、収率、化学選択性ならびに位置選択性が向上し、高機能触媒として極めて有用であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、高活性低原子価ニオブ化合物を効率よく発生させる新手法の開発を行った。その結果、新規低原子価ニオブ種は入手容易なペンタエトキシニオブを出発原料とし、Grignard試薬もしくはZn / TMSClと反応させることにより合成できる新手法を見出した。また、五塩化ニオブとヒドロシランとの反応によっても新規低原子価ニオブが得られることを見出した。これら、本研究で開発した新規低原子価ニオブ種は、イソシアナートの三量化およびアルキンとアルケンとのクロス環化付加反応によって、従来用いられている低原子価ニオブ種である、三塩化ニオブ種を凌駕する高い触媒活性を示すことを見出した。加えて、アルキンの三量化物などの従来の触媒系で得られる副生成物の生成を極限まで抑えることに成功した。また、反応の選択性も極めて高いことから、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、五塩化ニオブとヒドロシラン化合物から発生する低原子価ニオブ種が、1,3-シクロヘキサジエン誘導体をNbCl3(DME)錯体よりも高収率かつ、高位置、化学選択的に与えることを見出した。今後の研究では 末端アルキンとアルケンとの[2+2+2]環化付加反応において、 入手容易な五塩化ニオブから、還元剤を加えることなく、直接1,3-シクロヘキサジエン誘導体を得る手法を開発する。本手法は、入手容易かつ安定な五価ニオブ化合物から、反応系中で低原子価ニオブ種を発生させ、過剰量のアルケンを用い安定化させる効率的な触媒反応として価値の高いものである。 加えて、本研究で得られた、高活性ニオブ触媒を含窒素化合物に適用するとともに、メタセシス反応など実用的な反応に拡張していく。また、これらの反応における反応の選択性、収率の向上につながるべく、触媒種、添加剤などのさらなる改良を図る。
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