研究実績の概要 |
本研究課題では、貴金属に替わる汎用金属化合物を有機合成反応に用いることを目的とし、その解決手段として、低原子価ニオブ錯体の調製ならびにそれらを合成触媒として利用する新規有機変換反応の開発を行った。 我々はこれまでに、低原子価ニオブ化合物であるNbCl3(DME) 錯体を触媒として用いることにより、アルキンとアルケンとの[2+2+2]環化反応が生起し、1,3-シクロヘキサジエン誘導体が主生成物として得ることを見出している。 平成26年度の研究においては、アルキンとアルケンとの反応で得られる1,3-シクロヘキサジエンの選択性の向上ならびに、本反応で用いるニオブ触媒種の実用的改良を行った。結果、安定かつ入手容易な五価ニオブである、五塩化ニオブ(NbCl5)を触媒として用い、アルキンとアルケンを反応させることにより、反応系中で低原子価ニオブを発生することを見出し、1,4,5-置換1,3-シクロヘキサジエンが高収率かつ高位置選択的に得られることを見出した。本研究では、アルケンを過剰量用いることにより、還元剤フリーの条件で効率的に1,3-シクロヘキサジエン誘導体が高収率で得られることを見出したことが特筆すべき点である。 さらに、平成26年度の研究においては、ニオブ化合物を用いた含窒素有機化合物の高効率的な合成も行った。結果、五塩化ニオブを反応剤とすることによって、アルケンとニトリルとの反応において、第二級アミドを高収率かつ高位置選択的に得られることを見出した。本反応は芳香族、脂肪族置換基を有するアルケンのみならず、環状脂肪族アルケンにも適用可能であり、基質適用範囲の広い価値ある反応である。
|