研究課題
H27年度は、ヒドラジン構造を骨格内に含むバッキーボウルの合成、構造、性質について主に研究を行い、以下のような成果を得た。①バタフライ型分子の合成ジメチルアクリジン、フェノチアジン、アクリドンのジブロモ誘導体のNi(0)を用いた環化二量化反応によって、ダブルバタフライ型分子が合成できることを見出した。さらに、酸化的N-N結合形成反応によって、ヒドラジン構造を持つペリアセン類を合成した。ヒドラジノペリアセン類は、優れた可逆的酸化還元特性、蛍光発光などの物性を示すことを明らかにした。また、フェノチアジン骨格を有するダブルバタフライ型分子は、ヒドラジン構造を含むバッキーボウルに変換できることを見出した。②ヒドラジン構造を有するヘテロバッキーボウルの合成、構造、性質フェノチアジン骨格を有するダブルバタフライ型分子を用いて、還元的脱硫反応によるフェノチアジン環からカルバゾール環への変換を鍵段階として、ヒドラジン構造を有するバッキーボウルの合成に成功した。また、選択的1電子酸化、2電子酸化によって、モノカチオン塩、ジカチオン塩を合成した。X線結晶構造解析、構造計算、NMR計算から、ヒドラジノバッキーボウルは、中性状態ではおわん型・ツイスト型、モノカチオンではおわん型、ジカチオンでは平面型の構造を有していることを明らかにした。中性、モノカチオン、ジカチオンは、化学的または電気化学的手法によって可逆的に酸化還元できることから、この分子は電子の授受によって、その構造を曲面構造と平面構造との間で制御することができる。研究期間全体として、ピリジン環を含有するアザバッキーボウルの置換誘導体の合成、ヒドラジン構造を含有するアザバッキーボウルの合成を主な成果として達成した。
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