研究課題
基盤研究(C)
近年、樹状細胞へのガン抗原輸送によるガン免疫療法や、肺胞マクロファージへの抗菌薬輸送によるレジオネラ肺炎等の治療など免疫系細胞への生理活性物質輸送が重要性を増している。マクロファージや樹状細胞などへのターゲッティングにはマンノース受容体を利用する方法が効果的である。一方、近年の精密重合の発展により糖を側鎖に有する高分子(糖質高分子)においても複雑な分子設計が可能となってきている。我々はこれまでにマンノースを有する結晶性モノマーManEMAの精密重合技術により、マンノースを側鎖に有する糖質高分子PManEMAの合成手法を研究してきた。本研究課題では糖質高分子PManEMAと生分解性セグメントとのブロック共重合体を合成し、水中で自己組織化することによりマンノースで覆われたドラッグデリバリーシステム用ナノ粒子の創製を目的としている。平成25年度は主にカップリング反応によるブロック共重合体の合成方法の開発を行った。具体的には糖質高分子セグメントとして開始末端にアジド基を有するPManEMAの合成、生分解性疎水性セグメントとして開始末端にエチニル基を有するポリ乳酸PLLAの合成、さらに先行実験として両セグメントのクリック反応によるブロック共重合体PManEMA-block-PLLAの合成に低分子量ながら成功した。また生分解性カチオン性セグメントとしてポリ(L-リシン)PLLを合成するためのN-カルボン酸無水物(NCA)の合成を行った。
3: やや遅れている
精密重合法の研究が進んでいるスチレンなどの汎用モノマーと異なり、糖モノマーManEMAは重合のスケールが極端に小さい(典型的には1 mL以下)ため、原子移動ラジカル重合の成否が実験者の技量に依存しやすいという問題点が確認された。この問題点を克服するため、重合に使用する容器や手順の最適化などを行い、十分再現性の高いミクロスケール精密重合技術を確立するために時間を要した。現在では非常に再現性良くManEMAの原子移動ラジカル重合が可能となっている。
平成25年度の研究成果により、ManEMAの再現性の高い原子移動ラジカル重合が可能となっている。また先行実験として行ったポリ乳酸PLLAとのブロック共重合体の合成も使用したPLLAが低分子量ではあるが、合成できたことを確認している。今後は分子量の異なるPLLAを系統的に合成し、ブロック共重合体の合成の限界を見極めるとともに、糖質高分子poly(ManEMA)で覆われたPLLAナノ粒子の創製を進める。また平行してに生分解性カチオン性高分子であるPLLとのブロック共重合体PManEMA-block-PLLの合成も進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~mobata/research.html