研究課題/領域番号 |
25410128
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長田 裕也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60512762)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光学活性乳酸 / ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル) / らせん高分子 / 水溶性 |
研究概要 |
水は、無毒かつ安価に入手できる優れた溶媒であるため、水中で進行する反応系の開発は強い関心を集めており、水中反応場の精密な制御が重要な課題となっている。一方で、高分子のらせん構造を活用した高次構造制御に関する研究が盛んに行われており、らせん高分子を用いた不斉空間の構築に大きな関心が寄せられている。本研究で扱うポリキノキサリンは、ブロックコポリマー化が容易・主鎖のらせん不斉を完全に制御可能・らせん不斉を直接不斉反応場として活用可能という、他に類を見ない特徴を有している。このようなポリキノキサリンの親水性・疎水性の制御を達成することで、水中不斉反応場の精密制御が可能になると考え、研究を行った。 不斉らせん高分子ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の水溶性化を目指し、側鎖にL-乳酸由来の側鎖の導入を行なった。得られたポリマーの側鎖エステル基を加水分解することで、ポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の水溶性化に成功した。さらに、エステル基上の置換基として、各種アルキル基の導入を行ったところ、エーテル溶媒中で不斉らせん構造が反転するという興味深い現象を見出すことができた。また、導入したアルキル鎖長と不斉らせん誘起方向について検討を進めた結果、明確な偶奇効果を観測することができた。さらにこれらの光学活性乳酸誘導体を側鎖に有するポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)にホスフィン部位を導入し、高分子不斉配位子として用いたところ、各種エーテル/水混合溶媒中で高いエナンチオ選択性で不斉鈴木宮浦カップリングが進行することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ完全な水中不斉反応の達成には至っていないが、安価かつ大量に入手可能な光学活性乳酸誘導体をキラル源として用い、水/エーテル混合溶媒中における高い選択性での不斉反応を達成することができた。さらに、エーテル溶媒の種類を変えることで、不斉らせんの誘起方向のスイッチングに成功しており、不斉鈴木宮浦カップリングにおける生成物のキラリティの反転にも成功した。今後、水に対する溶解性をさらに高めることで、効率的な水中不斉反応場の構築に繋がるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、水溶性性とらせん不斉誘起を同時に発現可能な光学活性乳酸誘導体に着目して研究を進めてきたが。今後の研究ではより高い水溶性を付与することを目的とし、カルボン酸塩、アンモニウム塩、またはオリゴエチレングリコール基を側鎖に導入したポリ(キノキサリン-2,3-ジイル)の合成を行なう。得られたポリマーについて、水溶性の評価に加え、キラルゲストの添加による不斉らせん誘起について検討し、水中不斉反応場の構築を目指す。
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