研究概要 |
トルエン中アルキルリチウムおよびテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)存在下、スチレンのアニオン重合を行うと、アルキルリチウムから溶媒のトルエンへアニオン移動が起こり、これによって生成したベンジルアニオンがビニルモノマーのリビングアニオン重合の開始剤として働き、分子量分布の非常に狭い高分子を与えると同時にα末端に選択的にベンジル基を導入できることを以前に報告している(Y. Tsukahara, et al., Polym. J., Vol.26, No. 9, pp. 1013-1018 (1994), 後藤圭二ら, 高分子論文集, Vol.64, No.12, 943-948 (2007))。本研究では、この結果を転用してポリパラメチルスチレン(PpMSt)のメチル基をメタル化(主にリチオ化)することでマクロイニシエーター化を行った。また、これに続くパラメチルスチレンモノマー(pMSt)のリビングアニオン重合を繰り返し行うことで、順次、分岐世代が増加した多分岐型マクロイニシエーターを得て超多分岐アルボレッセントグラフト高分子の合成について検討を行った。得られたポリマーについてキャラクタリゼーションを行った結果、PpMStがリチオ化によって多アニオンのマクロイニシエーターに完全に転化し、分子量分布の狭さと1H-NMRスペクトルからpMStの重合がリビングに進行したことが示された。これと並行して、同じ手法で直鎖状ならびに環状マクロイニシエーターを経由して分子ブラシ状多分岐高分子ならびに太陽型多分岐高分子の合成を行い、分岐構造の違いによる分子特性ならびにバルク特性の違いの検討も開始した。また、同様のメタル化反応を用いて表面に開始点を導入したシリカ微粒子から重合を行い無機・有機複合粒子の合成も試みた。これの研究結果の一部は、論文に先立って特許3件の出願をすることができた。
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