主鎖がケイ素のみからなるポリシランは、その主鎖が共役性をもつことから導電性高分子や半導体高分子として期待されている。-50℃以下の低温領域において、溶液中におけるポリシランのUV吸収スペクトルが顕著な温度依存性を持つこと、すなわち主鎖のらせん構造が顕著に変化することが、そのグロバールコンホメーションにどのような影響を与えるかについては明らかになっていなかった。本研究では主に小角X線散乱法を用いてこの問題の解決を図ってきた。具体的には溶液中で低温領域にサーモクロミズムをもつ2種のポリシランとサーモクロミズムを持たないポリシランについて、溶液中での分子形態と分子間相互作用を広い温度範囲にわたって詳細に調べた。サーモクロミズムを持つもののみ高分子間の相互作用が顕著に変化し、低温側で引力的となった。これに対して、主鎖を反映する紫外吸収に顕著な変化があった温度領域でも、分子形態にはほとんど変化は見られず、低温領域の分子形態をUVスペクトルから予測することはできないことが明らかとなった。得られた結果について、原著論文として発表するとともに、国際会議で報告した。さらに、この手法を応用してほかの高分子の低温での分子形態を決定するために、多糖誘導体や主鎖に共役性を持つらせん高分子の分子形態および分子間相互作用を広い温度範囲で決定した。さらに、プローブ型の動的光散乱装置を低温測定用に使用できるセルホルダを製作し、低温での会合挙動の測定が可能なレベルに到達した。
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