近年,生産されている熱可塑性樹脂のおよそ半数以上をポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)が占めている。特に,PPは熱的特性,力学的特性に優れ,自動車用部材の筐体等に多く用いられている。筐体として用いる場合,各パーツを接合する方法としては主に熱融着法が用いられており,今後更なる効率化が望まれている。本研究では,ポリシラン添加によるPPの熱融着性の改質効果や,レオロジー的特性による分子運動性等に与える影響について検討した。また,化学計算手法を用いてPO系材料とポリシランとの相互作用についても検討を行った。 本実験では,PPとしてアイソタクチックPP,ポリシランにはポリメチルフェニルシラン(PMPS)を用いた。また,Si含有ポリマーの比較材料として主鎖に-Si-O-構造を有し,側鎖構造がPMPSと同様のシリコンオイル(Si-oil)を用いた。融着温度160oC,圧力0.05MPaにおける各種PP/PPフィルムの融着時間と剥離エネルギーの検討結果より,融着時間が長くなるにつれて,いずれの試料も剥離エネルギーの増加傾向が認められたが,Pristine PP同士,及びSi-oil塗布PPは完全には融着しなかった。次に,融着温度と融着時間がそれぞれ160oC,300秒で作製した融着フィルム界面のTEM観察を行った結果、未塗布とSi-oilを塗布したPP試料では明確な界面が観察されたのに対し,PMPS塗布PP融着界面では明確な界面が観察され難く,更にはラメラの貫通構造がフィルム界面において観察された。この結果より,PMPSはPP融着界面において連続した構造,特に連続的なラメラ構造を形成させる効果を有しており,その結果として顕著な融着効果を発現したものと考えられる。また、PEとPMPSの相互作用エネルギーをMD計算により算出した結果、相互作用エネルギーは負の値を示すことが分かった。
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