研究課題/領域番号 |
25410132
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
東 信行 同志社大学, 理工学部, 教授 (10156557)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ペプチド・ポリマーハイブリッド / 多重応答性ポリマー / エラスチン類似ペプチド / グラフトポリマー / 構造色 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、人工ペプチドを基幹素材としたナノスケールのソフトマテリアルを開発することである。とくに、人工ペプチドと汎用合成ポリマーをハイブリッド化させることにより、人工ペプチドに新たな機能が賦与され、ペプチド分子システムの更なる拡張が期待される。具体的には、ペプチド・セグメントとして温度に応答してコンフォメーション変化(フォールディング)するエラスチン類似ペプチド(ELP) に着目した。これをpH応答型ポリマーであるポリアクリル酸やポリアリルアミンにグラフト鎖として導入することにより、デュアルに応答する新しいタイプのペプチド・ポリマーハイブリッドの創成を期待した。 H26年度は、前年度において合成に成功した一連のハイブリッドポリマーの水中でのコンフォメーションや会合特性を検討した。まず、ELP部位の二次構造をCDスペクトルにより評価したところ、いずれのポリマーにおいても温度の上昇とともにエラスチン特有のコイルからII型のbeta-ターン構造への転移が確認された。ポリマー濃度を高めて会合特性を濁度測定から明らかにしたところ、昇温とともにCDスペクトルで観察されたコンフォメーション変化が生じて疎水的となり、分子間凝集にともなう白濁が生じるという、明確なLCST(下限臨界溶液温度)が存在することが明らかとなった。しかもこのLCSTは、pHに依存して大きく変化し、塩基性ポリマーであるポリアリルアミンの場合には、低pH領域を、逆に酸性ポリマーであるポリアクリル酸の場合には高pH領域を包含できることを示した。また、LCSTに及ぼすグラフト率の影響も明らかにした。 今後は、これら両ポリマーを用いて交互積層化を試み、その熱応答性を検討していくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載のとおり、当初予定したハイブリッドポリマーの感温的二次構造変化や、それに伴う分子間凝集の調査を行ったところ、LCST挙動が生じることを見出した。しかも、pHに応答することから、LCSTが20 °C~70 °Cの広い温度範囲に拡張できることを示した。ただし、凝集力が強すぎるためか、ハイドロゲルの形成は認められなかったため、今後は、両ポリマーの交互積層化とその感温特性を明らかにして行く。
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今後の研究の推進方策 |
一部修正を施しつつ、基本的には交付申請書に記載の実施計画にそって進めていく予定である。具体的な推進方策は次のとおりである。 (1)前年度の感温特性に関する知見をベースにして、酸型・塩基型ELPハイブリッドポリマーの交互積層化を検討する。その際、ELPグラフト鎖のコンフォメーションの影響を明らかにする。 (2)交互積層化に成功すれば、各積層プロセスにおける積層間隔の系統的・規則的な変化がナノメーターレベルで生じるため、構造色の発現が期待される。しかも、ELPグラフト鎖のコンフォメーション変化による極性変化も随伴することから、熱に応答した色調変化も期待される。
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