シクロデキストリンとキトサン、セルロースの複合化による分子認識ゲルの合成とそのキャラクタリゼーションを実施した。いずれも均一系溶媒を用いて合成を行なった結果、シクロデキストリンをゲル内部に均一的に重合化できることが固体NMR緩和実験により確認できた。次に相変化により応答可能なセンシング機能を有するゲルを構築するために、アニオン基をセルロースに付与した後、同様の合成法によってpH応答シクロデキストリン-セルロースゲルを調製した。本ゲルは外液のpHに対して応答し、ゲル体積の変化が確認された。よって、本課題の目的である相応答可能な分子認識ゲルが構築できた。 分子機能材料としての評価をカラムクロマトにより実証を行なった。その結果、ビスフェノールA等の有機分子を包摂し、分離機能を有していることも明らかになった。 またキトサン-シクロデキストリン複合ゲルの医薬分野への応用を視野に入れ、アスピリンを用いて、その薬物徐放性について検討を行なった。CDを含まないキトサンゲルでは擬似生体環境下で瞬時にアスピリンが放出された。一方、キトサン-CDゲルでは徐放開始後2時間で約20%のアスピリンが放出された後、残りの70%程度が開始後24時間にわたって徐放する二段階の放出曲線を示した。反応速度論的解析から、初期放出はCD以外のゲル内部に存在したアスピリンであり、徐放はCDからの放出であることが確認された。よってドラッグデリバリー等への利用が可能であることが証明された。
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