研究課題/領域番号 |
25410137
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
川上 淳 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60261426)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近赤外蛍光色素 / 蛍光プローブ / 2-アミノトリプタンスリン / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 金属イオン / 2-ヒドロキシトリプタンスリン |
研究実績の概要 |
650nm~900nmの生体の窓と呼ばれる波長領域に蛍光極大波長を持つ新規近赤外蛍光色素の開発を行うため、平成25年度から行っている2-アミノトリプタンスリンを基本骨格に持つ環拡張型、アルキニル基導入型、分子内FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)型の各種誘導体の合成に加えて、平成26年度は鈴木-宮浦クロスカップリングによる共役拡張型とトリプタンスリンの2-位のアミノ基をジメチルアミノ基やヒドロキシル基に変換した系の合成を中心に行い吸収・発光挙動について検討した。 その結果、トリプタンスリンの2-位のアミノ基をより強い電子供与性基であるジメチルアミノ基にすることで6-位のカルボニル基との間で起こるICT(分子内電荷移動)の度合いが高まり蛍光極大波長が大きく長波長側にシフトすることがわかった。更に、2-ジメチルアミノトリプタンスリンの8-位又は9-位にブロモ基を導入すると蛍光極大波長は更に長波長側にシフトし、プロトン性溶媒及び非プロトン性極性溶媒において650nm以上の近赤外領域で蛍光極大が観測されることがわかった。 また、トリプタンスリンの2-位のアミノ基をヒドロキシル基に変換した系では、プロトン解離したアルカリ水溶液中で吸収極大波長及び蛍光極大波長がともに近赤外領域で観測されることがわかった。 2-アミノトリプタンスリンのベンゼン環をアントラセン環に環拡張すると、蛍光極大波長は長波長側にシフトするがほとんど蛍光を示さなくなることがわかったが、金属イオンに対する応答性の実験ではアルミニウムイオンが存在するときのみ選択的に蛍光強度の増大が起こることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリプタンスリンの2-位の置換基をアミノ基からジメチルアミノ基やヒドロキシル基に置換することで、多くの溶媒中で近赤外蛍光を示す系の合成に成功している。特に、ヒドロキシル基を持つ系(或いはそのナトリウム塩)は水溶性であり、生体蛍光プローブとしての応用に適している。以上のように、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2-ヒドロキシトリプタンスリンはエステル化反応で2-アセトキシトリプタンスリンにすることで細胞膜の透過性が向上し細胞内に入り、エステラーゼによりエステル結合が切れると細胞内に留まり蛍光を発する蛍光イメージングプローブとしての性質を示すことが期待できる。今後は、その様なことが実際に起こるか実験で確認するとともに、トリプタンスリン骨格を持つ近赤外蛍光色素とBODIPYなどの既存の蛍光色素とを組み合わせた系を用いてFRETのon, offなどを利用した蛍光プローブを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の調達方法の工夫や所属機関の校費利用などにより、当初計画よりも経費の使用が節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
過度に節約することなく、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究遂行のために適切に使用する計画である。
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