研究課題/領域番号 |
25410139
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60343018)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタロミクス / スペシエーション / ゲル電気泳動 / 金属タンパク質 |
研究概要 |
本課題では,「生体中微量金属イオンがどのタンパク質にどれだけ結合しているか」を計測するためのゲル電気泳動法を基盤とした簡易で高感度なスペシエーション技術を確立することを最終目的とする。本年度は,これまで検出困難であった置換活性なタンパク質結合型金属イオンの検出をするために,金属タンパク質からの金属解離(分解)を抑制した「ソフトな分離場」の開発を行った。 まず,解離不活性なカチオン性およびアニオン性錯体を形成する配位子を利用し,分離系に存在する汚染金属イオンの電気泳動的な掃引による新規汚染金属除去法(双極方向汚染金属スウィーピング法,MICS)を考案した。汚染金属イオンが存在すると,バックグラウンド信号が大きくなり,ppb以下で存在するタンパク質結合型金属の検出が不可能になる。さらに汚染金属のタンパク質への誤取り込みや金属置換反応による解離反応の促進が起きてしまう。そのため,これまで低濃度で存在するタンパク結合型金属イオンを分離検出することは非常に困難であった。しかし,MICS-ブルーネイティブ-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(MICS-BN-PAGE)を低温化で用いることにより,汚染金属が分離場に存在せず(一桁pptレベル以下),かつタンパク質が泳動中に汚染金属と一切接触せずに分離できる系の構築に成功した。このMICS-BN-PAGEで分離したゲル分画中の金属イオンを酸溶出し,金属蛍光プローブを用いる金属検出PAGEによりppb以下のタンパク質結合型銅イオンを明確に検出できることが分かった。この方法を血清試料に用いたところ,従来は金属解離してしまうため検出が困難であったアルブミン結合型銅イオンの検出に成功し,血清中銅イオンの分布が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的の一つである「金属タンパク質からの金属解離(分解)を抑制した「ソフトな分離場」の確立」を,「双極方向汚染金属スウィーピング法(MICS法)」によって達成した。これは,測定の妨害となる汚染金属を平衡論的および速度論的に安定な錯体に変換し,両極方向へ電気泳動的に掃引することで,ゲル中に汚染金属が侵入せず,さらに,汚染金属が除去された直後の非常にクリーンな分離場でタンパク質分離する新規電気泳動法である。MICS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)を用いると,血清中の銅イオンを結合しているタンパク質から解離させることなく分離可能であることが分かった。分離したゲル分画に含む微量銅イオンを金属検出PAGEで測定することにより,タンパク結合型銅イオンのスペシエーションが可能となった。その結果,従来の報告とは異なる銅イオンの正確な分布(99%セルロプラスミン,1%以下アルブミン)が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,計画にある「複雑な生体試料から金属タンパク質だけを選択的に単離する新規二次元電気泳動法(ホロ/アポ変換二次元MICS-PAGE)」を開発する予定である。MICS-PAGEでは,多くの金属タンパク質がホロとアポタンパク質で異なる位置に泳動することを予備実験で見出しており,この性質を用いた二次元電気泳動法により,金属タンパク質だけを単離する方法である。予備実験ではトランスフェリンやセルロプラスミンなどに対しては金属タンパク質を単離することに成功しており,今後,様々な系に展開する予定である。
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