市販の水蒸気凝縮粒子カウンターを用いて、大気ナノ粒子に水蒸気を凝縮させ粒径を2~3 umまで肥大化させ、エアロダイナミックレンズを粒子導入部に持つ単一微粒子質量分析計によって測定できるよう、粒径400 nm程度に収縮させるよう様々な手法を試みた。粒径400 nm程度に、定常的かつ安定に収縮させることが難しく、ナノ粒子を水蒸気凝縮により成長させ、効率的に単一微粒子検出する際には、粒径制御を行うよりも、umサイズの微粒子を効率良く測定できるノズル型の粒子導入部を備えた単一微粒子質量分析計を用いる方が良いことが分かった。中国北京市に単一微粒子質量分析計を持ち込み、高濃度PM2.5による大気汚染が大きな社会問題となっている冬季も含め、大気ナノ粒子の連続測定を断続的に9ヶ月間(通算80日間)行い、約1320万個の大気ナノ粒子(粒径範囲は約100 nm ~ 1 um程度)の個別化学組成を観測した。秋季の観測データの解析から、高濃度PM2.5時と低濃度PM2.5時とで、単一微粒子質量分析計による組成測定では、化学組成に違いが見られること、高濃度PM2.5時には有機物質を含んだ大気ナノ粒子の割合が増えること、1つの高濃度PM2.5イベントも、複数の異なる粒子組成をもった複数の気塊が重畳しており、見かけ上1つのイベントと見えているなどが新たに明かとなった。冬季や夏季観測データについても解析を進めており、北京市における大気ナノ粒子の個別化学組成とそのサイズ分布に関する季節ごとの違いについて解析を進めている。
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