研究課題/領域番号 |
25410143
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
青柳 里果 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (20339683)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面科学 / データ解析 / イメージング |
研究実績の概要 |
前年度に作成したモデル試料、植物組織、3種類の高分子4層試料およびペプチド試料のToF-SIMS測定データについて、前年度はおもに主成分分析と多変量スペクトル分解の結果を比較したが、本年度は、データ前処理の影響について検討した。多変量スペクトル分解はデータ前処理の影響が小さかったが、主成分分析ではデータ前処理によって大きく結果が異なった。データ前処理による違いを比較検討した結果、異なるデータ前処理を適用することにより、試料についての未知情報に関する知見が得やすいことが示唆された。たとば、汚染は多くの場合未知であるが、汚染の種類の違いがデータ前処理の違いで引き出される場合があることや、類似する未知の共存物質が含まれる場合、二種類以上のデータ前処理法を適用して主成分分析した結果を比較することにより、未知の物質が特定しやすくなる場合があることが示された。 ToF-SIMSのスペクトル解釈法であるG-SIMSおよびg-ogramを多成分系試料にも適用し、二次イオンの分類に役立つかどうか検討した結果、未知の物質が含まれる多成分系でも、その試料に特徴的な分子に関連する二次イオン候補を選び出す手法として、有用であることが示された。たとえば、同じ材料をもととしてその後の処理が異なる2種類以上の試料を比較する場合、それぞれの試料に固有の分子を示唆する二次イオン群の候補をG-SIMSおよびg-ogramで選出できることが示唆された。 また、フラグメント化をほとんど引き起こさないソフトなイオン化法である分子クラスターを用いたイオン検出を用いたToF-SIMSによるフラグメント化の検討をさらに進めるために、同位体標識したペプチドによるモデル試料を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は所属機関の異動があったため、装置の移動および整備に時間がかかり、NFIRおよびAFMによる測定に関しては計画よりもやや遅れたが、その分、データ解析について研究を進め、計画よりも早く重要な知見が得られた。したがって、研究全体としてはかなり進捗が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従って、これまでに確立したプロトコールの一般化を目指し、より複雑な試料である生体試料などへ解析手法を応用する。また、高分子試料のNFIRデータの多変量解析による解析プロトコールを確立し、ToF-SIMSデータと比較する。データ前処理法の選び方および異なるデータ前処理方法による結果の差異、異なるデータ解析法によって引き出される情報の差異を比較し、未知の複雑な試料から正確に詳細な情報を引き出すプロトコールを示す。また、多変量解析とは異なるスペクトル解析法であるG-SIMSおよびg-ogramも多成分系試料における未知物質同定に役立つことが前年度の研究で示されたので、G-SIMSおよびg-ogramをさらに他の試料にも適用し、どのような場合に求める情報が得やすく、どのような場合には不向きであるのか明らかにする。 また、ソフトなイオン化手法である分子クラスタービームによる非破壊的なイオン検出法による同位体標識ペプチド試料の測定結果を解析し、一般的なToF-SIMSの一次イオンであるBiクラスターイオンおよび近年注目をあびているArガスクラスターイオンの照射によって発生するペプチドのフラグメント化機構の解明を目指す。分子クラスタービームによる測定に関してはギーセン大学(ドイツ)のDuerr教授と協力して実施する。
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備考 |
本研究でも使用しているデータ解析に関する情報を公開している。
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