研究課題
基盤研究(C)
酸化グラフェン(GO)は水中で均一に分散し、広範囲な波長領域に対応可能な強力な消光剤として利用できることから、近年、バイオ分析への応用が期待されている。一本鎖DNAはその塩基部位とのπ- πスタッキングや疎水性相互作用により、GOに強く吸着するが、二本鎖を形成すると、塩基対となり塩基部位が構造内部に埋まってしまうため、親和力が大幅に低下することが知られている。しかし、その吸脱着挙動に関する知見は十分ではない。そこで本研究では、GOに対するDNAの吸脱着に関する基礎的な検討を行い、GOを基体とする高選択的、高感度なバイオ分析システムの構築を試みた。GOに強く結合可能な吸着末端(長い一本鎖DNA部位)を有する捕捉DNAを利用し、蛍光色素(FAM)修飾プローブをGO上に固定した。この状態で、FAMはGO近接に位置するため、その蛍光はほぼ完全に消光した。ここで、プローブが捕捉DNAと結合した際、プローブ側に一本鎖突出末端(toehold)が残るように設計した。標的DNAはこのtoeholdをきっかけとし、鎖交換反応によって、より安定な(長い)二本鎖を形成すると考えられる。実際、この複合体に標的DNAを添加すると、プローブをGOに直接吸脱着させる従来法より、高い発光強度が得られた。また、非相補鎖添加時における非特異的な脱着も、従来法より低く、高いシグナルコントラストを得た。本手法では、従来法と異なり、プローブ脱着によって空スペースが生成しないこと、また、プローブ脱着後、一本鎖となった捕捉DNAが空スペースを覆うことにより、プローブや標的DNAの非特異的な吸着が抑制された結果と考えられる。また、toeholdの根元にミスマッチ識別部位を配置した場合、高いコントラストで一塩基の違いを見分けることができた(約5倍)。
3: やや遅れている
酸化グラフェン上で光化学反応の制御には至っていないが、代わりに酸化グラフェン上で特異的に起こる鎖交換反応を利用して新しいDNA検出システムを提案することができた。
酸化グラフェン上で特異的に起こる鎖交換反応にDNAサーキットや酵素反応を組み合わせてより高感度なシステムの構築を目指す。
研究進行に合わせて支出のタイミングが変更されたため購入予定だった備品(8連セルチェンジャー付き市街化し分光光度計)などを購入する
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