本研究では、マウス脳海馬の急性スライスを用いて、電気化学L-グルタミン酸センサーの信号と電気生理学的信号をreal-timeに同時に記録する方法を確立し、L-グルタミン酸濃度を実測することにより、神経領野CA1での神経可塑性の分子機構に関してグルタミン酸の役割を明らかにすることを目指している。最終年度の本年度は以下の点について検討した。 (1)前年度に引き続き、得られるセンサー信号から純にFaraday 電流のみを引き出す方法として (i) 容量性電流が十分に減衰する460 ms後の電流をサンプリングし、ボルタモグラムを再構成する及び(ii)1秒間隔で電流をサンプリングする二つのアプローチについて比較検討を進めた。その結果、1秒間間隔での測定がグルタミン酸センサーの長時間の記録に有利であることを示した。 (2)前年度に引き続き、低頻度刺激(2Hz)によって放出されるグルタミン酸濃度と長期増強現象が関連しているかについての考察を加えた。前述(1)の結果に基づいて、後膜阻害剤GYKI52466およびCNQXを使用して前年度の実験結果が適切であることを確認した。 (3)最終年度として、これまでの成果を総括して今後の展望を考察した。CA1領域では長期増強現象が発現する場合後膜を阻害してもグルタミン酸の放出が増加することを結論した。本研究は電気計測と電気生理学的計測との融合の成果であり、今後の進展が期待される。
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