研究課題
バクテリオクロリン類は近赤外領域に強いQy吸収帯を有することから、バイオセンシングへの応用を指向した機能性色素の基本骨格として有用である。また、ある種の自己集積型クロリンは特定の条件下において秩序だったJ型会合体を形成することにより、Qy吸収帯が大きく長波長シフトするとともに蛍光が消光する現象が知られている。今年度は(1)800nmを超える蛍光を有するバクテリオクロリン誘導体の開発、(2)バイオ分析への応用例として水系でのクロリン自己会合挙動を利用したアミノ酸センシング、を中心に(バクテリオ)クロロフィル誘導体の合成研究を行った。バクテリオクロリン環のQy軸上である13位ケトカルボニルの酸素原子を硫黄に置換したところ、蛍光は763nmから812nmへと長波長シフトしたが重原子効果のため蛍光強度は著しく弱くなった。そこで電子吸引基であるジシアノメチレンを3位または13位に導入すると蛍光強度を保ったまま波長はそれぞれ808nmおよび809nmとなり、800nmを超える蛍光色素骨格の開発に成功した。一方、3位にヒドロキシメチルまたはヒドロキシエチル基を有する亜鉛クロリンを合成し、5%THF / 0.1M PBS(pH=7.4)中でアミノ酸共存下に自己会合体を形成させたところ、ヒスチジン特異的に濃度に応じてモノマーの強い蛍光が観測された。中心の亜鉛にイミダゾールが配位することにより、会合体の形成を妨げるためと考えられ、ヒスチジン濃度の検出限界は約1mMであった。その他、クロリン誘導体を太陽電池に応用することにより、カロテノイドを電子ドナー/クロリンを電子アクセプターとする光電変換系の開発や、クロリン誘導体の電子ドナーに対し亜鉛クロリンの自己集積膜をホール輸送材とするクロロフィルベースの電池も実現できた。
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