研究課題/領域番号 |
25410154
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
宮武 智弘 龍谷大学, 理工学部, 教授 (10330028)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酵素 / 酵素阻害剤 / 蛍光センシング / リポソーム / 膜透過性ペプチド |
研究実績の概要 |
本研究では、医薬品の開発等に不可欠な酵素およびその阻害剤の活性評価を、従来法よりも簡便かつ迅速に行うことができる全く新しい蛍光検出型の分析システムの開発を目指す。カチオン性のポリマーがリポソームの脂質二分子膜を透過する現象を利用して、酵素反応溶液中の基質の濃度変化を蛍光強度の変化として検出する。こうして酵素反応を可視化し、酵素阻害剤の活性評価を容易にするラベルフリーな酵素活性評価系を構築する。 平成25年度の研究ではリン酸転移酵素である各種キナーゼ類の活性評価系の構築を達成できたが、その検出感度が低いために分析においてより多くの酵素を必要とし、分析のコストが高くなる課題があった。そこで平成26年度はその感度向上に向けた試験を実施した。グルコースをリン酸化するヘキソキナーゼを対象にし、酵素活性の評価に用いる膜透過性物質の濃度を最適化する試験を繰り返すことによって、従来法に比べ約1/8の酵素量で活性の評価を行うことができ、酵素活性評価の分析感度を向上させることに成功した。 また一方で、さらなる酵素活性評価の高感度分析を達成するため、新しい膜透過性の分子の開発を行った。従来から膜透過性をもつことが知られているヘキサアルギニンに対し、脂質二分子膜の疎水性領域の親和性を高めるため、疎水性基としてピレニル基を導入した新規なオリゴペプチドを合成した。ピレニル基の数を変えた種々のオリゴペプチドを合成し、それらの試験を行った結果、3つのピレニル基を持つペプチドが最も高い膜透過性を有することを確認し、従来の膜透過性分子に比べて約1/300の濃度で作用することを見出した。 以上の成果から、酵素の高感度分析につながる成果が得られ、希少かつ高価な酵素の分析にも本システムを適用できる道筋を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、酵素活性をより簡便に分析できるシステムを開発し、医薬品開発などにおいても利用できる分析法の構築を目指している。そのためには、①分析の感度を向上することで、高価である酵素の使用量を減らすこと、および②多品種の酵素を分析できること、の2点が求められる。膜透過性分子と蛍光性リポソームを用いた本系では、原理上様々な酵素を分析できるが、実用的な酵素活性評価系を達成するためには、感度の向上が不可欠であった。今年度の研究では分析手法を再度見直し、条件を最適化することで約8倍の感度向上を達成し、またより低濃度で作用する膜透過性のペプチドを新規に合成することに成功した。これにより、希少かつ高価な酵素の分析試験を行なえるため、研究計画に掲げた種々の酵素の分析を実施できる条件を整えることができた。以上のことから、当初計画していた研究は順調に進展しており、最終年度において目標が達成できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で実施している酵素活性の蛍光センシングシステムは、膜透過性分子と基質分子との相互作用をベースにして、酵素の活性を評価していることから、原理上、多品種の酵素の活性を評価できる。ただし、高価である酵素の分析においては分析感度の向上が不可欠であり、その点が研究の推進においてネックであった。今年度の研究により、一定の分析感度の向上を達成できたことから、今後は硫酸転移酵素などの生理的に重要な酵素の活性評価に照準を合わせた分析試験を行う。これにより、本分析システムが様々な酵素の分析に利用できることを実証する。また、一方で新規に合成した高い膜透過性を有するペプチド類を用いて酵素反応の分析を試み、従来法から100倍以上の感度をもつ酵素活性分析系の構築を目指す。
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