液膜型イオン選択性電極(ISE)の性能はイオン感応物質によって主に決まるが、電極膜中に数wt% しかふくまれていないため、同時に用いる高分子剤・可塑剤・添加塩の化学的・物理的性質によっても著しい性能改善が得られる。電極膜の柔剛性は視覚的にも分かる物性変化であるが、電極膜の柔剛性の評価法すら確立されていない。本研究では、高次構造評価において有用な情報を可視的に与えるとして着目されつつある磁気緩和時間を用いる新規評価法の確立を目指した。 平成27年度は、国際学会で血中ナトリウム・カリウムセンサーへの関心が非常に高かったことからナトリウムイオンに応答するドデシルメチルビス(12―クラウン―4) を感応物質として用いたISE電極膜の研究課題を展開した。そして、コンディショニング溶液や測定溶液に含まれる塩の違いが、ISE電極膜の物性に影響するのか、また、それをパルス法NMRで測定できるのかについて検討したところ、Solid Echo法から得られた緩和スペクトルでは、これらの違いが観測できることを見出した。この知見は、今後この物性解析法が進展してゆく上で非常に重要なポイントであり、本研究の意義は大きかったと言える。
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