研究課題/領域番号 |
25410156
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
栗崎 敏 福岡大学, 理学部, 助教 (20268973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 装置開発 / XAFSスペクトル / 紫外可視吸収スペクトル / 溶存構造 |
研究概要 |
実験室においてトリアザ環銅錯体を用いた触媒反応中に、XAFSスペクトルおよび紫外可視吸収スペクトル測定が可能な装置開発を行う。今回開発するこの装置は、一昨年までの科研費(平成22年度~24年度基盤研究C)において開発した実験室系in-situ XAFSスペクトル測定装置に新たに外部光源とマルチチャンネル分光光度計を組み込むことで、トリアザ環銅錯体を用いた触媒反応を行いながらトリアザ環銅錯体のXAFSスペクトル測定と反応生成物や銅錯体の紫外可視吸収スペクトル測定が可能となる。さらに、得られたXAFSスペクトルと紫外可視吸収スペクトルの解析を行うことで、反応溶液中の金属錯体の溶存構造を明らかにすることができ、より効果的な触媒としての金属錯体の創製手法の確立が期待される。 今年度は実験室系in-situ XAFSスペクトル測定装置に組み込む外部光源とマルチチャンネル分光光度計の選定を行った。測定試料としてトリアザ環配位子を用いて銅錯体の合成を行った。得られた銅錯体はESI-MASSや元素分析により目的の銅錯体の生成を確認した。また、得られた銅錯体の単結晶構造解析を行い、結晶構造を決定した。その後、pHを変化させながら紫外可視吸収スペクトルを測定した。その結果、配位子のトリアザ環の環サイズが9から12員環へと大きくなるにつれて銅錯体の構造が正四角錐型から算法両錐型へと溶存構造が変化していくことが推測された。銅錯体の触媒能についてはリン酸ジエステル結合のモデル化合物であるBNPPを用いた反応を行った。その結果、環サイズに応じて触媒能が変化することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、一年目に日本分光社製マルチチャンネル分光光度計を購入予定であった。しかし、その後、マルチチャンネル分光光度計について他社製品の検討を行ったところ、金額は高くなるが、波長精度などの性能が優れている機種が販売されていることが判明した。本研究は水溶液中の銅錯体の紫外可視吸収スペクトルを測定し、分子軌道法により理論スペクトルを算出し実測スペクトルと比較することで溶存構造解析を行う。そのため、できるだけ良好なスペクトルを得る必要があり、高性能な分光光度計と光源が必要である。今回新たに検討した装置は分光光度計と光源が一体となって販売されていること、また平成26年度4月以降に新型が販売されるということから、装置の購入を初年度から2年度に変更した。その結果当初の予定より装置の完成がやや遅れるという結果となった。 一方で、測定試料については銅錯体の合成は順調に進んでおり、その組成や純度も測定に十分なものであることが明らかとなった。また、合成した銅錯体の触媒能や結晶構造についても決定することができ、試料作成についてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、新たに購入を検討したマルチチャンネル分光光度計システムの購入を行う。購入後、光源ユニット、マルチチャンネル分光光度計や光ファイバーなどの動作確認を行う。また、我々が作製した装置で紫外可視吸収スペクトルが測定できるように試料セル部分に光ファイバーが接続可能となるような改造を行う。装置を組み上げた後、性能評価を行うために水溶液中の各種銅錯体の紫外可視吸収スペクトル測定を行う。得られた結果と通常の紫外可視分光光度計で測定した結果とを比較し装置の性能評価を行う。得られた結果を参考にして今回作製した装置の微調整を行い、装置の最適化を行う。 初年度に合成した配位子を用いてBNPPの加水分解反応を行い、XAFSと紫外可視吸収スペクトルの同時測定を行う。各種銅(II)錯体の溶存構造は、測定したXAFSスペクトルを単結晶データや論文のデータを基に構造モデルを作成し、分子軌道法や多重散乱法を用いて決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、一年目に日本分光社製マルチチャンネル分光光度計を購入予定であった。しかし、その後、マルチチャンネル分光光度計について他社製品の検討を行ったところ、購入金額は高くなるが、波長精度や波長幅などの性能が優れている機種が大塚電子から販売されていることが判明した。本研究は水溶液中の銅錯体の紫外可視吸収スペクトルを測定し、分子軌道法により理論スペクトルを算出し実測スペクトルと比較することで溶存構造解析を行う。そのため、できるだけ良好な実測スペクトルを得る必要があり、高性能な分光光度計と光源が必要である。今回新たに検討した装置は高精度の分光光度計と試料周りのアプリケーションが多く様々な測定に対応可能である。また平成26年度4月以降に新型が販売されるということから、装置の購入を初年度から2年度に変更した結果次年度使用額が生じた 今年度は昨年度の繰越金と今年度の予算を合わせて新たに購入を検討した大塚電子性瞬間マルチ測光システムの購入を行う。購入後、光源ユニット、マルチチャンネル分光光度計や光ファイバーなどの動作確認を行う。また、我々が作製した装置で紫外可視吸収スペクトルが測定できるように試料セル部分に光ファイバーが接続可能となるような改造を行う。装置を組み上げた後、性能評価を行うために水溶液中の各種銅錯体の紫外可視吸収スペクトル測定を行う。
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