研究課題
本研究は、生体分子や合成および天然の有機低・高分子などを対象に、天然存在比同位体の観測に基づき、分子の構造解析を行うのに有効な固体核磁気共鳴測定法の開発を行うこと、さらに、これらの分子の構造解析を行うことを目的としている。本年度は、以下の内容について研究を行った。1.様々な2次元相関固体NMR測定法の開発を試みた。2.芳香族ポリケトンはスーパーエンジニアリングプラスティックとして実用化が期待されているが、オルト-アリーレン基を有する同分子の合成法は確立されていない。この新規合成過程で生成される分子は有機溶媒に不溶なため、固体NMRを用いて、天然存在比同位体13C核を観測し、各反応過程での分子構造の同定を行い、これに成功した。3.シンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(stPMMA)は、特定の有機溶媒に高温で溶解後冷却することにより、らせん構造を形成することが知られている。さらにC60などの分子を上述の過程で混合すると、同分子がstPMMAに包摂されることが報告されている。本研究では、C60に鎖状分子が修飾付加された分子を用いて、同様に調製された試料について、分子複合体の状態解析を行った。固体NMRを用いて、天然存在比同位体1Hおよび13C核を観測し、複数の異種核間相関NMR実験を行い、同分子がstPMMAに包摂されることを実験的に証明することに成功した。4.超高磁場下で高速試料回転条件を用いて、主に天然存在比同位体の1H核を観測することにより、家蚕絹フィブロインの線維化後のモデル分子の高分解能1H固体NMRスペクトルを得た。さらに複数の1H同種核相関NMR実験を行い、隣接分子間の精密な配座情報を取得し、既存の家蚕絹の分子構造モデルが誤っていることを解明し、新しい構造モデルを提唱することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
天然存在比同位体を観測に基づき、生体分子や合成および天然の有機低・高分子の構造解析研究は極めて順調に進行している。測定法開発は途上にある。
天然存在比同位体を観測に基づき、生体分子や合成および天然の有機低・高分子の構造解析研究はすでに十分に目的を達している。今後は、研究時間を測定法開発に注力する。
本年度は予定いていたより、若干実験が遅れたため、支出は、参照試料の購入のみとなった。このため、残金が発生した。
次年度は、必要な試料を購入、および調製すると共に、実験に必要な少額の周辺機器も購入し、研究を完結させる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
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