研究実績の概要 |
平成26年度は、シリコン(100)単結晶上に抵抗加熱蒸着法により1, 2, 5, 10 nmの膜厚の金を蒸着した試料を用いて、高エネルギー加速器研究機構の放射光ビームライン(BL-27A)において、X線吸収分光(XAS)によるスペクトルの取得を行った。 XAS測定では、まず、それぞれの膜厚の試料に対して基板成分であるSiのK-edge(1830-1860 eV)および薄膜成分であるAuのM-edge(2720-2800 eV)の吸収スペクトルの取得を行った。その結果、SiとAuの信号強度の比が膜厚に大きく依存することが示された。次に、それぞれの試料について、XAS測定による深さ方向分析を試みた。ここでは、XAS測定の際に検出する電子のエネルギーを5, 10, 20, 30, 40, 50, 100 eVと変化させてXASスペクトルを取得し、その変化を調べた。その結果、Au/Siの信号強度比は、5~50 eVのエネルギーの範囲で、検出する電子エネルギーの増加とともに顕著に増加することが示された。一般的に、電子の平均自由行程は、電子エネルギーの増加とともに減少して50 eV付近で最小となり、その後、増加していく。従って、50 eVのエネルギーの電子を検出した場合には、より表面からの情報のみを得ることになり、本実験の結果はその傾向と一致していた。以上のことより、XAS測定において、検出する電子のエネルギーを変化させることにより非破壊での深さ方向の分析が可能であることが示された。
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