研究実績の概要 |
本研究では有害金属イオンに特異的に結合する配位子を金ナノ粒子に固定化し、有害金属イオンを選択的かつ高感度に検出する比色センサーの開発を目的としている。前年度はジグリコールアミド酸(DGAA)と金結合性ペプチドを融合した新規配位子を用いて、金ナノ粒子の合成と配位子の固定化を同時に行うことに成功し、DGAA固定化金ナノ粒子をワンポットで合成する手法を確立した。 本年度は、DGAA固定化金ナノ粒子を用いて有害金属イオンに応答する高感度比色センサーの開発について検討を重ね、以下のような成果が得られた。 1.DGAA固定化金ナノ粒子はTEM測定により粒子径が約13 nmであり、水溶液は赤色をしていた。これにHg(II)を加えると、水溶液の色が青紫色へと変化し、凝集した金ナノ粒子がTEMおよびDLSにより観察された。一方、コントロール実験として、DGAA未修飾の金結合性ペプチドを固定化した金ナノ粒子では、Hg(II)の添加による色の変化は示さなかった。従って、このHg(II)に応答した色変化はDGAA部位とHg(II)の結合を介して金ナノ粒子の凝集が誘発されたことに起因することが示された。 2.Hg(II)応答性の経時変化を測定し、2分間で反応が完了することが明らかとなった。 3.Hg(II)以外の金属イオンとして、Li(I), Na(I), K(I), Ca(II), Mg(II), Mn(II), Co(II), Ni(II), Zn(II), Cd(II), Pb(II), Cu(II), Cr(III)を用いて同様の実験を行った場合、DGAA固定化金ナノ粒子の色の変化は起こらなかった。一方、Hg(II)と他金属を共存させた場合は、色の変化が起こり、本システムがHg(II)に対して高い選択性を示し、他金属イオンによる阻害・干渉も起こさないことを明らかにした。
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