研究課題/領域番号 |
25410166
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宇井 美穂子 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30549580)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光制御 / 光受容蛋白質 / PYP / 非天然アミノ酸導入 / モジュール化 |
研究実績の概要 |
本年度は、これまでに構築したモジュール化改変型PYP(Hpg5-PYP)を基盤とした光応答性分子の構築と機能評価を行った。当初の目的であるタンパク質の光操作のモデル実験として、まず、親水性高分子への化学修飾によってHpg5-PYPを導入することを目指した。アルキニル基を有するHpg5-PYPでは、アジド基を有した合成親水性高分子と室温条件下にて高効率でクリック反応が進行し、高分子複合体を得た。また、条件を検討することで最終的にハイドロゲルを形成するに至った。合成親水性高分子と連結した状態のHpg5-PYPは、光中間体の寿命が長くなっていたものの野生型PYPおよび未反応のHpg5-PYPと同様に青色光に対する反応性を持ち、光反応サイクルを有することが分光学的解析から明らかとなった。さらに、水晶振動子による粘弾性計測システムを用いて得られた高分子複合体を解析したところ、青色光照射下では粘度が低下することが明らかとなった。これらの結果は、単にモデル実験としてHpg5-PYPの有効性を示すばかりではなく、タンパク質材料を基盤とした光応答性マテリアルの開発に繋がるものと期待できる。 また、前年度までに合成に成功した非天然アミノ酸L-azidohomoalanine (L-Aha)を用い、アジド基を導入したモジュール化改変型PYP(Aha5-PYP)を構築した。質量分析の結果、アジド基導入体もアルキニル基と同様にPYPの5つのメチオニン残基がL-Ahaに置き換わっている分子として得られた。この新規分子は、円偏光二色性および紫外可視吸収スペクトル測定による分光学的解析の結果、野生型PYPおよびHpg5-PYPと同様に青色光に対する反応性を持ち、光反応サイクルを有することが明らかとなった。さらに、親水性合成分子との段階的な化学反応を踏ませることで、Aha5-PYPの多量体の生成も確認出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に構築したモジュール化改変型PYP(Hpg5-PYP)を用いて、光応答性を有する機能性分子の構築を達成することができた。これについては、現在、論文を準備中である。また、アジド基を有する非天然アミノ酸L-Ahaを導入した新たな改変型PYP(Aha5-PYP)の構築と分子特性評価を達成した。この新規分子については、段階的に化学反応を行うことで多量体形成させ、新たな機能性分子構築への道筋を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中に達成したモデル実験の結果を踏まえ、標的タンパク質に対してモジュール化改変型PYPの導入を行う。遺伝子工学的手法を用いてPYPを融合させたホスホジエステラーゼでは、既に光応答性付与を実現しており、化学修飾を用いた本方法を用いて更なる光応答性の向上を目指す。また、モデル実験で得られたモジュール化改変型PYPの高分子体としての興味深い光応答挙動をさらに発展させるため、Hpg5-PYPあるいはAha5-PYPを用いて多量体形成を行い、光応答性バイオマテリアルとしての応用を見据えた基礎実験を展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度請求額と合わせ、最終年度に計画している研究の遂行、研究成果発表に伴う諸経費(旅費、学会参加費)に使用する予定である。
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