研究課題/領域番号 |
25410167
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荒木 保幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80361179)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 円二色性 / 高感度検出 |
研究実績の概要 |
生体分子であるたんぱく質や核酸は、大量スケールでの入手が難しくかつ高額になるだけではなく、特に高濃度条件では不可逆な自己 会合により沈殿の形成あるため、高濃度条件での各種実験に困難さが伴うことが多い。円二色性(CD)測定は、核酸やタンパク質の高次構造を鋭敏に検出可能であり、生体内環境、つまりは溶液中における構造・動的挙動解明の有効な手法の一つであるが、比較的高濃度試料が必要であるため、上記した生体機能分子由来の問題点により、その有用性が遺憾なく発揮されているとはいい難い。本申請では、申請者がこれまで独自に取り組んできた楕円偏光を利用するCDの新規測定手法を発展させ、CD測定装置の超高感度化を達成し、超希 薄溶液でのCD測定を可能とし、生体機能分子-薬剤間相互作用の解析へと応用する。ただし乗り越えなければならない技術的課題も存在する。それは、ひとえに楕円偏光を作成するための光源の安定性と絶対光量不足である。この点は、微弱光検出手法であるフォトン カウンティング法を用いることで改善する。フォトンカウンティング法は、微弱な発光現象を捉えるために常用されている手法であり、CD測定のような透過光測定に用いられることは稀である。しかしながら、本手法の弱点である透過光強度不足を逆手にとることで、 超高感度CD検出法を確立し、生体分子と薬剤間相互作用解析へと応用することが、本申請の骨子である。平成26年度では前年度に引き続き現有設備である高輝度白色光源を利用した楕円率検出CD測定法のセットアップに、フォトンカウンティング手法を取り入れる改良を行うとともに、可視領域から紫外領域にかけて広範囲にCDを示すPYP、GFP等の発光タンパク質や、可視光に光吸収帯を示す基質を取り込んだ核酸等の試料を用いたCD測定の超高感度化の実証実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度問題点として挙げた、光学素子の透過率の問題により高輝度白色光源の光量が減少し結果として想定したスペックの100%を達成することが出来ていない点の改善を行ったところ、ほぼスペック通りの光量を得ることが出来た。しかしながら、スペック通りの光量を得たにも関わらず、当初の計画であった紫外光領域での光検出が見られなかった。これは用いた光検出器が長期年数使用したものであったため、劣化したためであると考察された。そこで、本年度の計画に使用する予算の一部を次年度に繰り越して、27年度に新規光検出器を購入する計画を立てた。この点において計画が若干遅れていると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
紫外光領域での透過光強度上昇の一番の問題点は、光学系に導入している直線偏光子が持つ紫外光領域での透過率であるが、今年度は、使用見込みの光検出器に予想外の計時劣化が判明し、期待した光量の検出が出来なかった。そのため、本年度は、新たな光検出器の導入をする必要があり、それを用いた紫外光領域での透過率を向上させた新たな直線偏光子の設計を急ぎ行う予定である。そして、当初の計画にある、高感度CD測定法の応用として複雑な生体分子-薬剤間相互作用の解析への応用へとつなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で使用予定であった、既存の設備である光検出器が、長年の使用による計時劣化のために、年度途中で使用不可な状態であることが明らかとなった。そこで、今年度の使用予算の一部を次年度に繰り越すことで、新規光検出器の購入ができないかと考えた。そのため、次年度繰越金額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度計画の物品費と、昨年度からの繰越金額を合わせ、光検出器の購入費用とする。また、光検出器の購入後、既存の分光器と共同で使用するための治具の設計開発費としても使用する。
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