研究課題
円二色性(CD)測定は、核酸やタンパク質の高次構造を鋭敏に検出可能であり、生体内環境、つまりは溶液中における構造・動的挙動解明の有効な手法の一つであるが、比較的高濃度試料が必要であるため、上記した生体機能分子由来の問題点により、その有用性が遺憾なく発揮されているとはいい難い。本課題では、代表者がこれまで独自に取り組んできた楕円偏光を利用するCDの新規測定手法を発展させ、CD測定装置の超高感度化を達成し、超希薄溶液でのCD測定を可能とし、それを小分子での実証実験により確立した後、生体機能分子-薬剤間相互作用の解析へと応用する。本年度は、実際に生体分子を用いた微量検出の実証実験を行う。その際、可視領域から紫外領域までを通したCD検出をもくろみ、試金石的な化合物として、カチオン性ポルフィリン色素と二重らせんDNAとの相互作用の解析を通し、10-6 M 程度のDNAおよびカチオン性ポルフィリンにおけるCD測定を試みた。その結果、可視領域におけるカチオン性ポルフィリンの光学遷移に誘起されるCDスペクトルの測定がポルフィリン濃度が10-5M程度では十分に可能であることが判明した。また、カチオン性ポルフィリンとDNAとの相互作用は光線力学療法への応用が期待されている分野であり、ポルフィリンが光励起された状態でのCDスペクトル観測は、実際の光線力学療法の理解につながる重要な知見である。そのため、ポルフィリンをレーザー光により光励起し、そのCDスペクトル変化を検出することを試みたところ、ポルフィリンの光励起三重項状態の生成に伴う、ポルフィリンの過渡的な退色が十分な感度で検出可能であることが判明した。この実験から、本研究により構築したCD測定法を用いることで、ナノーマイクロ秒領域における時間分解CD測定法への発展が可能であることが実証されたと考えられる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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