研究課題/領域番号 |
25410169
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥 浩之 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20301749)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マラリア / 感染履歴 / 抗体価測定 / ペプチド / 抗原 / 放射線重合 / ナノ微粒子 |
研究実績の概要 |
平成26年度は初めにブラジル流行地にて採取された患者血清を用いて抗体価測定を行った。熱帯熱マラリア原虫のワクチン候補タンパク質から設計した新しい20残基ペプチド抗原(SERA5、CS-protein、AMA1-Trp、AMA1-Serの4種類)の微粒子による凝集反応である。その結果、変異型のTrp配列は高い反応性、実験的に多く用いられる3D7型のSer配列は低い反応性を示すことがわかった。これはAMA1蛋白が遺伝子多型の大きな蛋白として多くのアミノ酸変異がみられること、メロゾイト表面に存在することでヒトの免疫系を回避していることなどに起因していること、によって説明される現象である。その他に熱帯熱マラリア原虫の粗抗原を化学修飾した微粒子を作成し、96穴マイクロプレートを用いたラテックス凝集反応によって抗血清や患者血清との反応性の測定を行った、同時に特許出願を行った。
さらに引き続きDip-Stick型の抗体価測定キットの試作を開始した。最初に、従来のDip-Stick型検査キットであるニトロセルロース膜上を用いて2種類の試作を行った。一つ目は、膜上にペプチド抗原を物理吸着させて、患者血清と反応、抗ヒトIgG抗体によって被覆した金微粒子で検出を行った。2つ目には、患者血清とペプチド抗原によって被覆した金微粒子の反応を行い、反応後の血清を抗ヒトIgG抗体を物理吸着させたニトロセルロース膜上に流すことで、マラリア感染に由来する抗体の検出を行った。ウサギ免疫血清を用いるなど、様々な条件検討を試みた。今年度の結果としては、ニトロセルロース膜を直接用いた方法では、マラリア感染に由来する抗体の検出に適さないことがわかった。
よって、平成26年度は当初の計画以上に研究を実行したが、やや予想と違う結果となり、Dip-Stick型の抗体価測定キットには更に工夫が必要であるとわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度に予定していた(3)抗原微粒子の作成と(4)患者血清を用いた抗体価測定に加えて、平成27年度に実施予定であった(5)Dip-Stick型の抗体価測定法の開発と(6)マラリア原虫の粗抗原を化学修飾した微粒子を作成し、96穴マイクロプレートを用いたラテックス凝集反応によって抗血清や患者血清との反応性の測定を行った、同時に特許出願を行ったため、当初の計画以上に進展することができたと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに順調に研究が進んでいる。今までに作成した抗原微粒子のうち、臨床応用や流行地での使用を考慮すると、乳酸脱水素酵素の部分配列ペプチドを用いた抗原微粒子の有用性が最も期待されている。実際に平成27年5月13日に技術展示会であるBiotech2015にてブース出展と技術説明発表を行い実用化へ進む予定となっている。
そこで平成27年度は、さらに多くの患者血清を用いてマラリア感染履歴の診断への有用性と限界を検証する。さらには4+1種類あるヒトマラリアの鑑別(熱帯熱・三日熱・卵形・四日熱マラリア+サルマラリア)の可能性を検証する。
同時にDip-Stick型の抗体価測定法の開発を引き続き行う。研究期間内においては、フィルターペーパーの選定、血清の希釈率や検出用試薬(金微粒子や蛍光色素、検出試薬の用量)について最適化を行う予定である。
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