マラリアは熱帯・亜熱帯を中心に蔓延する世界最大の感染症であり、世界中で最先端の科学技術を織り込んだ診断法、治療薬、ワクチンの開発が進められている。一方で最先端の対策手法や医療は、必ずしもマラリア流行地の開発途上国では使えない問題や、必要とする患者には届かないという問題が指摘されている。そこで我々は、流行地でも普及可能な材料技術開発を目指し、マラリアの診断に有用な、抗原ペプチドや微粒子材料による抗体価測定キットの開発を行っている。
平成27年度はDip-Stick型の抗体価測定キットの改良を行った。最初に、従来のDip-Stick型検査キットであるニトロセルロース膜上を用いて3種類の検討を行った。1つ目は、膜上にペプチド抗原を物理吸着させて、患者血清と反応、抗ヒトIgG抗体によって被覆した金微粒子で検出を行った。2つ目には、反応の順番を変更して、患者血清とペプチド抗原によって被覆した金微粒子の反応を行い、反応後の血清を抗ヒトIgG抗体を物理吸着させたニトロセルロース膜上に流すことで、マラリア感染に由来する抗体の検出を行った。その結果、ニトロセルロース膜には低分子量の抗原ペプチドが固定化されないこと、患者血清や検出用試薬と反応させる際にニトロセルロース膜上からはがれてしまうことが明らかとなった。そのためDip-Stick型の抗体価測定キットには新しい材料の開発が必要であると結論された。
最終的に3つ目の検討として、低分子量ペプチド抗原に適した材料開発に成功した。3つ目の方法によって作成したDip-Stick型の抗体価測定キットを用いて、ウサギ免疫血清や患者血清を用いたマラリア感染履歴の診断への有用性を検証した。
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