研究概要 |
糖水酸基の保護基として用いたときに、その糖誘導体の結晶性を向上させる新しい高結晶性の嵩高いシリル基の探索を行った。ケイ素保護基のケイ素と糖水酸基の酸素原子との結合(Si-O)は、酸もしくは塩基により解離する。有機合成などで良く使用されているケイ素置換基については、酸、塩基に対する安定性の序列がそれぞれ報告されている。しかし、原料が市販されていないケイ素置換基については、その安定性は未知である。そこで今年度は、酸、塩基いずれにも安定性の高いことが知られているt-ブチルジフェニルシリル基【-Si(tBu)Ph2】をリード化合物として、ケンブリッジ結晶構造データベース、理論計算の結果を参考に隣接水酸基の速度論的保護および糖誘導体の結晶性向上を達成する新規ケイ素置換基の探索を行った。 ケイ素上のアリール基には、3,5-ジ(t-ブチル)フェニル基【m-Dbp】、3,5-ジ(i-プロピル)フェニル基【m-Dip】、3,5-ジメチルフェニル基【m-Xyl】、2,4,6-トリ(t-ブチル)フェニル基【Tip】、4-メトキシフェニル基【p-Ans】の計5種類を使用した。また、アルキル置換基には、t-ブチル基【tBu】、i-プロピル基【iPr】、メチル基【Me】の3種類を使い、それら両方の組み合わせでできるシリル基を新たに合計8種類合成した。 アノマーベンジル置換のグルコースに新規シリル基を6位水酸基に導入した結果、ほとんどの生成物がシラップ状の粘性液体となったが、その中でも唯一、-Si(p-Ans)2tBu置換グルコースが結晶性を示すことが分かった。現在、この知見をもとに更なる高結晶性シリル基の探索およびその置換基による位置選択的・立体選択的グリコシル化反応の調査を継続している。
|