研究課題/領域番号 |
25410171
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
野村 渉 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80463909)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質 / メチル化 / 人工酵素 / エピゲノム編集 / 核酸 / ケミカルバイオロジー / 合成生物学 |
研究実績の概要 |
ヒトゲノムに対する理解が深まるにつれ,その編集操作にも関心が高まってきている。次世代の遺伝子改変・編集技術としてジンクフィンガー融合型DNA修飾酵素を用いたノックアウト個体の作製例が増えている。応募者はジンクフィンガードメインをDNA結合タンパク質に用いた酵素開発を推進してきた。最近になり,新たなDNA結合ドメインとしてTranscription-like activation effector(TALE)が同定され,ジンクフィンガードメインと同様に酵素への応用が試みられている。しかし,DNA結合の詳細な解析,結合親和性と酵素活性の相関性などについて詳細な検討を行った例はない。そこで,本研究ではジンクフィンガードメイン,TALEドメインをDNA結合ドメインとするDNA切断酵素,および世界初のメチル化酵素の構築を行い,それぞれDNA結合カイネティクスの違いによる酵素活性への影響について解析を行い,酵素活性の最適化に関する知見を得ることにした。 第二年度の本年も継続して分割型DNAメチル化酵素の開発研究に取り組んだ。TALEドメインについては合計で8種の標的配列に対して結合するドメインを構築した。ジンクフィンガー融合型DNAメチル化酵素に関して、さまざまなアッセンブリー様式を検討した結果、これまでと比較して明らかに高い活性を示すドメインの組み合わせを得ることができた。 次年度においては引き続きアッセンブリー様式とメチル化効率の相関に関して詳細を検討するとともにTALEをDNA結合ドメインとした分割型DNAメチル化酵素の構築にも取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の研究計画では(4)TALEをDNA結合ドメインとしたヌクレアーゼ(TALEN)の構築と(5)ジンクフィンガー融合型酵素とTALE融合型酵素の活性の比較に取り組むことを挙げていた。 (4)については,DNA結合活性と酵素活性の相関性の評価をするために,DNAメチル化酵素のほかにヌクレアーゼとしても利用した。また転写活性化因子のDNA結合ドメインとして利用した場合、結合親和性に応じて転写活性化能も向上することが知られているため,この実験系を導入した。転写活性化についてはレポーター遺伝子によって定量する系を構築することができた。 (5)についてはTALE融合型DNAメチル化酵素のメチル化反応効率を,これまでに構築したジンクフィンガー融合型酵素と同条件で追跡することを計画していた。この方法では大腸菌内に酵素遺伝子をコードしたプラスミドを導入する。同じプラスミド遺伝子上にメチル化の標的配列もコードしてあるため,大腸菌内で酵素が発現してメチル化反応が起こったのちにプラスミド遺伝子を回収する。メチル化反応の定量はメチル化配列を切断しない制限酵素(HhaI,FspI)を用いた切断反応によって行う。ジンクフィンガー融合型酵素のアッセンブリー様式を検討する中で明らかに活性が向上した組み合わせを見出したため,これに関する解析に重点を置いて種々検討を進めた。得られた知見はTALE融合型酵素に関しても利用することが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度までの進捗状況が概ね当初の予定通りであるため,引き続き研究計画に沿って実施する。大腸菌内もしくは試験管中での反応を評価することで定量性のある実験結果から酵素活性とDNA結合活性の相関関係,またアッセンブリー様式の違いが反応効率に与える影響を明らかにできた。最終年度では細胞内での活性評価を行う予定であるが,大腸菌内で安定した高い活性を示す分割型酵素が得られているためこれを用いて哺乳類細胞を用いた実験を実施する。 (6)ZFN,TALENを用いたゲノム遺伝子への変異導入実験については構築したTALEドメインを用いて引き続き実験を実施する。これにはDNA切断が起こった場合,細胞内の遺伝子修復系が働くことによって変異が導入されることを利用し,生じた変異によって塩基対のミスマッチが生まれるため,ミスマッチ部位を認識して切断する酵素(Cel-I Nuclease)を用いて変異導入率を評価する。 (7)分割型DNAメチル化酵素の細胞内活性評価については大腸菌内で高い活性の確認された分割型DNAメチル化酵素の遺伝子を哺乳類細胞発現プラスミドに導入し発現確認を行う。ゲノム上のメチル化反応はバイサルファイト法による検出を検討する。また,標的配列をプロモーター配列に組み込み,その下流にルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドを作製する。メチル化反応によって転写活性が抑制されるため,ルシフェラーゼの発光測定によってメチル化反応効率を定量化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定と比べて実験に使用する消耗品コストが低く抑えられたため,初年度での予算を次年度に繰り越した。第二年度においては当初の予定に加え,初年度に抑えられた消耗品使用が増加したために次年度使用額も併せて利用することができた。最終年度ではコストのかかる哺乳類細胞実験を予定しているため次年度使用額として15万円程度を繰越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に沿って実験を実施する予定である哺乳類細胞実験に用いる消耗品が多く必要となる予定であるため,消耗品購入に利用する予定である。
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