既存のゲノム編集技術はヌクレアーゼ活性に基づく技術であるが、ジンクフィンガー(ZF)融合型DNA修飾酵素によって配列特異的にDNA組み換えやDNAメチル化が行える。これらはゲノム編集/エピゲノム編集に利用できる技術として有用である。本研究では分割型DNAメチル化酵素の酵素活性に与えるDNA結合活性の影響を解析し、より高活性な酵素を取得することを目指した。DNA配列に応じて再会合する分割型メチル化酵素を構築し、DNAの片方の鎖にZFPの認識配列を設定した場合にメチル化活性を示すことが確認されている。DNAメチル化酵素の会合状態を分子モデリングで確認すると、ZFと分割型ドメイン同士において立体障害が存在する可能性が示唆された。そこで標的配列上での会合様式やZFと酵素ドメインを繋ぐリンカーの長さについて様々な変異体を構築して酵素活性への影響を解析した。ZFには9塩基を認識する結合親和性が明らかなHS1、HS2を用い、分割型メチル化酵素にはHhaI methyltransferase(M.HhaI)を基に、アミノ酸配列を1-240 (N末端ドメイン)および210-327 (C末端ドメイン)に分割し、各ZFと異なる長さのリンカーで繋いだ組み合わせを用意してメチル化効率を大腸菌内で評価した。発現プラスミドpAraに分割型メチル化酵素ドメインの各遺伝子と標的配列を導入し、大腸菌内での一定培養時間を経てプラスミドを回収し、HhaIによるプラスミド切断でメチル化反応効率を算出した。また、バイサルファイト反応を行い、標的配列上でのメチル化を確認した。その結果、異なるDNA鎖上に標的配列がある場合に高い活性を示すことが示され、複合体モデルからも実験結果を支持するデータが得られた。今回得られた知見は哺乳類細胞内で機能する分割型DNAメチル化酵素開発の基盤となることが期待される。
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