昨年度に作成したレッド銅タンパク質は、天然タンパク質では見つかっていない新規な銅イオンの配位構造を持っていることが示唆された。銅イオンへの配位残基とCdへの配位残基との間に相関があることが知られているので、Cdを使ったNMRで配位構造を調べた。その結果、予想通り、銅イオンに2つのHisと2つのCysがタイプ1.5で配位していることを明らかにした。新規な銅イオンの配位構造を持っていることから酸化還元電位を昨年に引き続き測定したが、観察できなかった。酸化還元反応が非常に遅い、電極との電子移動の効率が悪い、より大きなあるいは小さい酸化還元電位である、等が考えられる。 ヘモシアニンタンパク質は、タイプ3型の銅イオンを含む。タイプ3型の銅イオンは、2つの銅イオンが酸素を介してつながった構造で今までにヘリックスバンドル型の構造に構築された例はない。我々も以前に試みたが銅イオンは一つしか入らなかった。今回、研究課題のブルー銅やレッド銅タンパク質の解析中に、Cysが酸化されることを明らかにした。この事実を利用することでタイプ3型の銅イオン配位構造の設計を行った。すなわち、2つの銅イオンの配位場所以外に離れた所に、銅イオンの一時的配位場所としてCysをおいた。UV-visとEPR測定で銅イオンの配位を調べた所、最初に銅イオンがCysとその近くのHisで配位し、二番目の銅イオンが残りのHisと配位していることが示唆された。ヘリックスバンドルタンパク質に2つの銅イオンを接近して配置できた初めての例である。次に、H2O2を用いて酸化を行った。しかし、タイプ3型にはなっている証拠は得られなかった。 今回の研究で、種々のタイプの銅イオンの配位構造を構築できることが明らかになり、設計方法の基礎が作られた。
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