研究実績の概要 |
生物にとって鉄は必須の金属イオンである。病原性細菌に中には宿主に豊富に存在する血液中のヘムを鉄源として活用しているものもある。本研究では、ヘムを鉄源として生育する3種類の病原性細菌(Pseudomonas aeruginosa, Yersinia pseudotuberculosis, Eikenella corrodens)について、ヘムが菌体内に取り込まれる仕組み、ヘムから鉄が遊離する仕組みを明らかにすることを目的にして研究を推進した。 これまでに、(1) P. aeruginosaでは、分泌されたヘモファHasAが鉄源としてのヘムを外膜の受容体にまで運ぶ役割を担っており、チロシンならびにヒスチジンのヘム鉄への配位が機能発現に重要であること (2) Y. pseudotuberculosis でも、分泌されたヘモファHasAが鉄源としてのヘムを外膜の受容体にまで運ぶ役割を担っているが、チロシンのヘム鉄への配位とアルギニンとヘム平面とのスタッキングなどが機能発現に重要であること を明らかにした。 最終年度は、(3) Y. pseudotuberculosis では、P. aeruginosaが持つ典型的なヘムオキシゲナーゼとは異なるアミノ酸配列を持つ酵素が、酸素分子存在下で酸化的にヘムを分解する過程で鉄の引き抜きを行っていること (4) P. aeruginosa, Y. pseudotuberculosis, Eikenella corrodensには、ヘム(ポルフィリン環)を酸化的に分解することなくヘムから鉄を引き抜くタンパクも有している可能性があること (5) P. aeruginosaでは、フタロシアニンが鉄源としてのヘムの菌体内への取り込みを阻害するが、Y. pseudotuberculosisでは同様の阻害がみられないこと などを明らかにした。
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