研究課題/領域番号 |
25410178
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
橋詰 峰雄 東京理科大学, 工学部, 准教授 (40333330)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体材料 / フィルム / 多糖 / 細胞 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が最近開発した、水溶性生物由来多糖のみを原料としながら水不溶性をもつフィルム材料(多糖複合フィルム)について、医用材料としての応用を念頭におき(1)薬物徐放担体としての評価、(2)細胞培養基材としての評価、(3)新規成膜法の開発、について検討を行うことを目的としている。 本年度は(1)については、種々の条件におけるコンドロイチン硫酸(CS)/キトサン(CHI)複合フィルムの薬物モデル(色素)担持量を定量的に解析した。また高分子としてタンパク質BSAの担持および徐放にも成功した。タンパク質の担持にあたり従来よりも低温でのプレスによってフィルムを作製したが、高温で熱プレスした場合とマイクロスケールの形態評価では同様のフィルムが得られることがわかった。ただし材料特性などについてはさらなる検証が必要と思われる。 (2)については、CS/CHIフィルム上でのNIH3T3細胞の増殖性を詳細に評価した結果、細胞増殖が抑制されていることが明らかとなった。その機構については、フィルム表面形態の影響が示唆されたが、今後さらなる検討が必要である。フィルム上の細胞の増殖活性を回復できるかについて検討を行ったところ、培地中に生理活性ペプチドや増殖因子を添加することで、回復の傾向が見られることがわかった。 (3)については、備品として購入した加熱延伸機を用いてCS/CHIフィルムの作製について検討した。種々の条件について検討したところ、従来の熱プレス法よりも大面積のフィルムを再現性良く作製することに成功した。延伸ローラー間の距離を制御することによりフィルムの膜厚が制御可能であることも示され、膜厚20μm程度のフィルムになると、高い柔軟性をもつフィルムが得ることが明らかとなった。今後は熱プレス法で作製したフィルムとの材料特性の比較を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)薬物徐放担体としての評価、(2)細胞培養基材としての評価、(3)新規成膜法の開発、のいずれにおいても予定した通りの体制を組み一定の成果を得ることができた。その点では順調であったが、成果が出るにつれ新たな検討課題も見つかり、その意味では完全に順調であるとするべきではないと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)薬物徐放担体としての評価、(3)新規成膜法の開発、については研究計画としては概ね当初計画通りに進めていけばよいと考えている。(2)細胞培養基材としての評価については、当初計画していた(1)の成果と融合させた、薬物徐放性をもつフィルム上での細胞増殖性についての検討を目指すだけでなく、フィルム上で細胞活性を一時的に休止させ、外的因子によって必要なときに細胞活性を回復させることができるような材料としての方向性についても検討した方が良いと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部講師による講演などの謝金、および印刷費や研究成果公開費などその他としての支出が予定通り執行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬等の購入のための物品費(消耗品費)に充て、より多くの実験を行うこととする。また最終年度であるため論文投稿、研究成果の公開を積極的に行う。
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