研究課題/領域番号 |
25410179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
齋藤 良太 東邦大学, 理学部, 准教授 (90327974)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルドース還元酵素阻害剤 / ドッキングスタディ / 糖尿病合併症治療薬 / ピラジン |
研究概要 |
アルドース還元酵素(ALR2)は糖尿病合併症に関連した酵素であり、その阻害剤は糖尿病合併症治療薬となり得る。今回、アカホヤ由来ボトリラジンBをリード化合物とし、2位に様々な置換フェニルカルボニル基を導入した誘導体、ならびに6位に様々な縮合二環式芳香環を導入した誘導体を合成し、それらのアルドース還元酵素阻害能を評価した。その結果、2位に3,4-ジヒドロキシフェニルカルボニル基を有し、かつ6位にキノリン-2-イル基を導入した誘導体において、唯一の市販薬であるエパルレスタットに匹敵する高い阻害活性が観測された。またこの化合物の標的酵素への結合をドッキングスタディによってシミュレートした。その結果、ALR2選択性と深く関わりのあるLeu300との相互作用が観測された。この結果から、今回開発した化合物がALR2の類似酵素を阻害しない高選択性かつ高阻害活性を有することが示唆され、新規糖尿病合併症治療薬候補となり得ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「高い生理活性を示す新規化合物の合成」、「標的酵素への結合を量子化学的手法によりシミュレート」は計画通り進行し、これにより次の分子設計に繋がる重要な知見を得ることができた。しかし、酵素活性評価について、予定していた機器が円安の影響で高騰し、購入できなかったため、計画していた高速スクリーニングができず、従来より行われている評価法を用いているため生理活性試験が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は6位の置換基効果をより詳細に検討するために、誘導体を多数合成し、それらのアルドース還元酵素阻害活性を評価する。あわせて、合成化合物の標的酵素への結合の様子を量子化学的手法によりシミュレートし、実測の阻害活性と構造との相関について検討する。 その後、高い阻害活性を示した化合物について、標的酵素との複合体のX線結晶構造解析を行う。 また、類似酵素であるアルデヒド還元酵素に対する合成した化合物の阻害能評価も行い、標的酵素への選択性について検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に購入を計画していた機器(計上額1,200千円)が型落ちのため取り扱い中止となっており、代替機器を探したが、いずれも予定を大幅に超える額(2,500~3,000千円)であったため、一旦購入を中止し、機器分と関連消耗品分を次年度に繰り越した。 高速スクリーニング可能な代替機器の購入を検討しているが、機器選定と購入に時間がかかるようであれば、従来法での活性評価に切り替える。なお、従来法では当初の計画よりも使用する酵素量(評価対象化合物1つあたり10千円程度)が10倍となるため、酵素の購入、ならびに活性評価用消耗品の購入のために繰り越し分と次年度分とを併せて使用する予定である。またこの場合一部外注での測定が必要となるため、その費用にもあてる。
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