研究課題/領域番号 |
25410180
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齋藤 義雄 日本大学, 工学部, 准教授 (40385985)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
これまでに、我々の独自のコンセプトに基づき、天然の核酸塩基に三重結合を経て置換芳香族化合物を連結した一群の蛍光核酸塩基の合成を報告している。特に昨年度の研究では、ピリジン誘導体を含む蛍光核酸分子を合成することに成功しており、pH変化に鋭敏に応答して発光-消光するセンサー分子の開発に成功している。しかしながら、これらの分子は蛍光発光と消光が切り替わるpH領域が酸性側に寄りすぎており、実際にセンサー分子として用いるためには、より中性に近い領域で切り替わる分子の開発が必要であった。そこで本年度は、昨年に引き続き、さらにいくつかのピリジン誘導体の合成、開発を行なった。いくつかの誘導体を合成した結果、若干ではあるが従来より中性に近いpH領域で蛍光発光-消光が切り替わる分子を得ることに成功した。それらの分子に関して、現在より詳細な光学特性の検討を行っている。また、昨年示した研究計画に従って、これらのセンサー分子のオリゴヌクレオチド鎖への導入の検討も並行して行なった。得られたヌクレオシドの有機溶媒に対する溶解度が極めて低いことから、オリゴ鎖への導入は非常に困難であったが、導入時の条件検討を繰り返し行うことで、ごく最近オリゴヌクレオチド鎖への導入に成功している。現在、得られたオリゴヌクレオチドプローブの光学特性の検討を行なっている段階であり、今後一塩基識別能等の検討を行ってゆきたいと考えている。また、ヌクレオシドモノマーの状態での細胞内pHセンシングの実験も、本年度新たに取り組んでいる。現在、細胞に対する条件検討を行なっているが、平成27年度内には、細胞内のイメージングも可能にしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階での研究の進捗状況は、おおむね順調であると考えている。平成25年度終了時では4種類のヌクレオシドの合成に成功していたが、平成26年度終了時には、更に2種類の新規ヌクレオシドの開発に成功している。それらの化合物の様々なpH環境下における光学特性(蛍光スペクトルおよび吸収スペクトルなど)の評価も既に完了している。平成25年度に得られた分子と比較して、平成26年度に得られた分子は、若干ではあるが中性に近いpH領域で蛍光発光-消光が切り替わることがわかり、光学特性の向上が認められた。最終年度となる平成27年度は、更なる性質の向上を目指して、新しい化合物の開発も継続して行ないたいと考えている。 また、本年度は、昨年示した研究計画に従って、これらのセンサー分子のオリゴヌクレオチド鎖への導入も検討しており、実際にこれらのセンサー分子が導入されたオリゴヌクレオチド鎖を得ることにも成功している。 さらに当初の予想を上回るような、蛍光発光波長が長い優れたヌクレオシド分子が得られたため、細胞を使用した実験などにも新たに取り組み始めている。これらのことから平成26年度の研究は、おおむね順調に進展していると言うことが出来、最終年度である平成27年度は、研究計画書の計画に細胞を使った実験を追加するような形で研究をすすめたいと考えている。実用化により近いと考えられる細胞に対するセンシング実験を積極的に行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
DNA二重鎖中に多数存在しているリン酸アニオンの影響により、DNA中のpH環境は局所的に非常に大きく異なっていることが知られている。特に最近の研究では、single-stranded DNA中に導入された化合物のpKaが、duplexになることで1以上も変化することが報告されている。本研究では、この性質に着目しており、DNA中の一塩基ミスマッチやバルジ構造、一塩基欠損のようなわずかな微細構造の変化をpH環境変化として捉えるような、pH環境に鋭敏に応答するインテリジェントな蛍光核酸塩基の開発を目指している。そのため、新たに開発したヌクレオシドモノマー分子をオリゴヌクレオチド鎖に導入して、その一塩基識別能を評価する実験は必要不可欠であると言える。平成26年度の終了時点で、ヌクレオシドモノマーのオリゴヌクレオチド鎖への導入に成功したため、最終年度である平成27年度は、それらを用いた一塩基識別能の検討を中心に行いたいと考えている。 また、当初の予想を上回るような、蛍光発光波長が長い優れた蛍光ヌクレオシド分子が得られたため、細胞を使用した実験などにも積極的に取り組みたいと考えている。細胞に対するセンシング実験は、より実用化に近いと考えられるため並行して実験に取り組みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度の前半の段階で、分子の設計に時間がかかってしい、実際の化合物の合成に取りかかるのに時間を要してしまった。そのため、平成26年度使用金額が生じてしまった。平成26年度は高価なDNA合成試薬を用いるようになって若干当初の予定金額を上回って使用した。しかしながら平成25年度の分の金額が大きかったため平成27年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」でも述べたように、一部で予想を上回る良い結果が得られたため、平成27年度は、予想していた以上に、高価なDNA合成試薬や酵素等を使用することが見込まれている。そのため当初計画より多い予算が必要となり、次年度使用額分も適切に使用されると考えている。
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