本研究によりヒトアルゴノート2タンパクの機能構造に基づくsiRNAの化学修飾によりAgo2によるアンチセンス鎖選択の効率を改善することが可能となること、シグナルペプチドとのコンジュゲートにより細胞内局在化の制御が可能となること、両親媒性ペプチドとの複合体により細胞膜透過性の改善及び細胞内での安定性の向上が可能となることを示すことができた。 hAgo2は,4つのドメイン、Nドメイン,PAZドメイン,MIDドメイン,PIWIドメイン、と2つのリンカー、L1リンカー、L2リンカー、から構成される,分子量が約100 kDaのタンパク質であるが、siRNAのリン酸化されたガイド鎖5’-末端がhAgo2のMIDドメインとPIWIドメインとの境界部分にあるカチオン性アミノ酸に富む5’末端結合ポケットに取り込まれて安定化されていることが明らかとなっている。我々のグループでは、センス鎖、アンチセンス鎖の5’-末端にアミノ基を導入したsiRNAを合成し、そのサイレンシング効果への影響を評価した。その結果、アンチセンス鎖5’-末端に5'-アミノTを有するsiRNAは、1本鎖化後にRISCを不安定化し、サイレンシング効果を消失させることを見出した。この結果は、5'-アミノTをパッセンジャー鎖の5'-末端に導入したsiRNAはoff-target効果を起こさないことを意味しており、重要な発見である。 今後、さらに多様な化学修飾、コンジュゲート、複合体の組み合わせにより、細胞内の標的分子と親和性良く特異的に結合して、副作用なく目指した作用だけを発揮する様な核酸医薬分子の設計に近づくことができると期待される。
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