研究課題/領域番号 |
25410185
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宇田 亮子 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90321463)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光応答 / グアニン四重鎖 / トリフェニルメタン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、光照射により核酸のグアニン四重鎖を安定化させるシステムを開発することである。グアニン四重鎖の安定化には、光でイオン化するユニークな化合物であるトリフェニルメタン誘導体を用いる。グアニン四重鎖は染色体末端のテロメアに存在しておりテロメラーゼの働きを阻害するため、がん細胞に多量に存在するテロメラーゼを抑えることができる。光は非接触で迅速、かつ微小空間の制御に優れた外部刺激であり、がん細胞のみをターゲットとして治療するには最適な手法といえ、副作用の解決に貢献することになる。昨年度は、光応答性を有するビニルアルコールとのマラカイトグリーンコポリマーに光照射を行うことで、グアニン四重鎖形成が促進されることを報告した。そこで本年度は、このコポリマーとオリゴヌクレオチドとの詳細な結合評価を行った。グアニン四重鎖を構成するオリゴヌクレオチドには、ヒトテロメアに見られる塩基配列が繰り返された24 merのものを用い、結合部位に相当するマラカイトグリーンシュウ酸塩との結合をコポリマーの結合と比較した。蛍光スペクトルからはどちらもオリゴヌクレオチドと結合することが分かったが、グアニン四重鎖形成には大きな違いが現れることが円二色性スペクトルの結果から明らかとなった。コポリマーのグアニン四重鎖形成能力は高く、ポリビニルアルコール部位が寄与したものと考えられる。また、マラカイトグリーンカチオンとオリゴヌクレオチドとの結合をアデニン、チミン、グアニン、シトシンのホモポリマーについても調べたところ、グアニンホモポリマーとの相互作用は観察されたが、その他のホモポリマーとはほとんど結合しないことが分かった。さらに、二本鎖DNAとオリゴヌクレオチドとの結合を比べたところ、マラカイトグリーンカチオンは二本鎖DNAにも結合するものの、一本鎖DNAとは全く異なる結合様式であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標として掲げた「応用シーンを考えた際に必要となる、光照射後のマラカイトグリーンのグアニン四重鎖への特異的な結合」について、異なる塩基配列のオリゴヌクレオチドや二本鎖DNAとの比較して評価することができた。しかし結合状態の詳細については更に検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
グアニン四重鎖との結合についてさらに詳しく調べる。特に、コポリマーのポリマー主鎖が重要であることが本年度の結果より明らかとなったため、コポリマーの種類を変化させて機能向上を狙う。更にテロメラーゼ活性測定を行い、光未照射ではテロメラーゼ活性は元のままであるが、光を照射すればテロメラーゼ活性が抑制される条件を検討する。
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