昨年度までに膜にアンカリングされることによりProd1の運動が著しく抑えられること、そしてこの結果はアンカー型Prod1の凝集によることを固体NMRと支持平面二重膜(SPB)を用いた蛍光顕微鏡観察から明らかにした。今年度はさらにこのProd1の凝集体が何分子から構成されているのかを解析したところ、凝集体を構成するProd1の数は導入したProd1の濃度に依存しており、低濃度では数十、高濃度では数百個のProd1が集まって凝集していた。さらに、Prod1がSPB上で”trans”の相互作用をしていること、また”trans”の相互作用には凝集体の存在が必要であることを明らかにした。次に、アンカー型Prod1が膜を接着して膜の集合体を形成しているかを解析するために、動的光散乱(DLS)を用いてアンカー型Prod1の存在下と非存在下におけるリポソームの粒子径を測定した。アンカー型Prod1非存在化と比較して、アンカー型Prod1存在下では自己交換関数は緩やかな減衰を示した。穏やかな減衰は集合体サイズが増加し、拡散速度が遅くなったことを示している。粒子の平均直径サイズを解析したところ、アンカー型Prod1が存在することでサイズが10倍以上大きくなっていた。これらの結果はアンカー型Prod1が接着タンパクとしての役割を持っていて、アンカー部分が接着に重要であることを示している。最後に凝集時におけるProd1の立体構造の変化を膜に再構成したGPIアンカー型Prod1の13C-13C相関固体NMRスペクルの交差ピークの化学シフト値により解析した結果、膜上のアンカー型Prod1は溶液状態とほぼ同じ構造を取っており、同じGPIアンカー型タンパク質に属するプリオンの様な凝集時に見られるような構造変化はないことより、Prod1の膜上での凝集はプリオンとは違うメカニズムであることを示した。
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