研究課題
有機合成反応は、幅広い分野において必要であり、社会に貢献するところは非常に大きい。しかし、現状では、酸化還元を伴う有機合成には爆発の恐れがある危険な物質を用いる場合があり、安全な方法の開発が待ち望まれている。震災などの想定外の状況下においても、人体や環境への影響ができるだけ少ないことも重要である。そこで、本研究では、空気中の酸素などの、自然界に存在する安全な物質を用いる酸化還元反応を検討し、有用物質を合成することを目的とした。還元反応には、Geotrichum candidum NBRC 4597 由来のアルコール脱水素酵素を用いる研究を行った。モデリングにより、酵素の立体構造を推測し、部位特異的な変異を導入した。さらに、基質結合サイトの近傍のみならず、基質結合サイトからは離れているが酵素の効率に影響をおよぼすと予想される部位を予測し、効率的な酵素をシミュレーションにより得た。また、実際に実験により酵素を調製し、アセトフェノンをモデル基質をとして用いて還元活性を測定し、より効率的な酵素反応を開発できた。酸化反応には、Fusarium sp. NBRC109816由来のBaeyer-Villiger 酸化酵素を用いる研究を行った。酵素の大量発現系の構築を行い、安全で効率的な酸化反応を確立できた。幅広いケトンを基質として反応を行った。また、不斉炭素と反応部位が離れている場合においても、高い立体選択性で酸化反応が進行することを見出した。スルフィドの酸化反応により光学活性なスルフォキシドを合成する反応も検討した結果、高い立体選択性で反応が進行することを見出した。
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