マンガンイオンをL-プロリナト配位子で架橋したマンガン7核錯体の合成に成功し、X線結晶構造解析を実施したが、X線回折装置が故障し、解析は終了できなかった。不調のX線回折装置によるデータの解析では、7核錯体陽イオンの価数から判断すると、この7核錯体のマンガンイオンは2価のマンガンイオンに3価若しくは4価のマンガンイオンを含む混合原子価状態にある可能性があるが、7核錯体の中心に位置する金属がマンガンではなく、ルビジウムである可能性も出てきており、改めてデータ測定が必要である。また、以前に合成したニッケルイオンとガドリニウムイオンをL-プロリナト配位子で架橋した4核錯体が強磁性的相互作用することは既に報告済みだが、この4核錯体がかなり大きな質量磁気エントロピー変化を示すことが分かり、この4核錯体の改良を試みた。質量磁気エントロピー変化の値を更に大きくするために、L-プロリンよりもモル質量の小さなグリシンを配位子とする4核錯体の合成を試み、4核錯体の合成に成功したが、錯体の構造にディスオーダーが生じていることが分かり、この錯体に置いても改めてデータ測定が必要である。現在、鉄イオンとラガドリニウムイオン及びL-プロリン配位子を含む異核多核錯体の合成に成功し、X線結晶構造解析を実施したが、解析は終了していない。不調のX線回折装置によるデータの解析では、3つの6配位鉄イオンと4つの9配位ガドリニウムイオンを含む新規異核多核錯体であり、3つの鉄イオンが正三角形を形成し、3つのガドリニウムイオンがその正三角形と60度回転して重なる位置に正三角形を形成し、4つ目のガドリニウムがガドリニウム正三角形の重心を貫く3階字句上に位置する興味深い構造であることが示唆されており、改めてX線結晶構造解析を行い、磁気的性質や電気化学的性質の測定を行う予定である。
|